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ELNEC-Jについて

ELNEC(End-of-Life Nursing Education Consortium)は、2000年に米国のアメリカ看護大学協会(American Association of Colleges of Nursing: AACN)とCity of Hope National Medical Centerが共同して設立した組織です。ELNECは、エンド・オブ・ライフ・ケア(EOLケア)や緩和ケアを提供する看護師に必須とされる能力修得のための系統的な教育プログラムを開発しており、これまで開発したプログラムにはELNEC-Core、ELNEC-Pediatric Palliative Care(小児)、ELNEC-Critical Care(急性期)、ELNEC-Geriatric(老年期)などがあります。また、それらの教育プログラムを実施できる指導者の養成は、米国内だけでなく世界101カ国でも行われており、2024年1月現在で世界各国に47,215名の指導者が誕生しています。

わが国では2007 ~ 2009 年度厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業「がん医療の均てん化に資する緩和医療に携わる医療従事者の育成に関する研究」班(分担研究者 竹之内沙弥香)の一環として、ELNEC-Coreの日本語版である、ELNEC‐Japan(ELNEC-J)コアカリキュラム指導者養成プログラムが開発されました。そして2009年より、本学会の事業の一環として教育研修委員会内ELNEC-J作業部会(現ELNEC-JコアカリキュラムWPG)がELNEC-Jコアカリキュラム指導者養成プログラムを開催し、2024年3月現在全国に2600名を超えるELNEC-Jコアカリキュラム指導者(ELNEC-Jコアカリキュラムの教材を活用した教育を実践できる者)が誕生しています。

<ELNEC-Jコア※のミッション>
すべての人々へ質の高いEOLケアを届ける
※ELNEC-Jコアとは: ELNEC-Jコアカリキュラム指導者の皆さんとコアカリキュラムWPG・WGから成る組織のことを指す

我が国では少子高齢化が進み、今後本格的な「高齢・多死社会」を迎えます。国民の総死亡数が増加を続ける中で、看護師は、人々のQuality of Life (QOL)を維持・向上させること、患者の尊厳ある人生の最期を支えるとともにその家族に安心を与えること、つまり“質の高いEOLケアを提供する”という重要な役割を担っています。その役割を果たすために看護師には、患者のニーズに応じて適切なケアを提供できる知識・技術が不可欠です。さらに、そのためには知識・技術を教える指導者や、効果的な教育システムが必要です。ELNEC-JコアカリキュラムWPG・WGは、ELNEC-Jコアカリキュラム指導者の養成や、ELNEC-Jコアカリキュラム指導者養成プログラムの実施などの教育的取り組みを通して、緩和ケアを必要とする人や、人生の終焉にある患者と家族をサポートします。

ELNEC-JにおけるEOLケアの定義

ELNEC-JにおけるEOLケアとは、
「病いや老いなどにより、人が人生を終える時期に必要とされるケア」を指します。

ELNEC-Jコアカリキュラム指導者養成プログラムについて

対象者

EOLケアや緩和ケアの教育を行う立場の看護師

目的

  • ELNEC-Jコアカリキュラムを教育する上で効果的な教育技法を学ぶ
  • エンド・オブ・ライフ・ケアや緩和ケアに携わる看護師の教育に際して、それぞれが直面する課題を克服する方策を考える

プログラム開催者

教育・研修委員会内ELNEC-JコアカリキュラムWPG・WG

プログラムの内容

「ELNEC-Jコアカリキュラム指導者用ガイド」の内容や使用方法の説明と、講義やグループワーク等の具体的な教育方法の検討

プログラムの特徴

  • 充実した内容:専門的知識が豊富なスタッフが企画・運営する各セッションから、教育技法に関する基本的知識を習得し、より効果的な教育法を検討できる、充実した学習の機会となる
  • 実践的な内容:各セッションのグループワークやロールプレイなどを通して、インタラクティブに教育する方法を自らの体験を通して学ぶことにより、すぐに実践に活かすことが出来る
  • 修了証の交付:本プログラムの修了により、「ELNEC-Jコアカリキュラム指導者」としての修了証が交付され、ELNEC-Jコアカリキュラム指導者には、ELNEC-Jコアカリキュラム看護師教育プログラムの開催が求められる
  • 有効な資料の提供:ELNEC-Jコアカリキュラム看護師教育プログラムにて使用する教材(ELNEC-Jコアカリキュラム指導者用ガイド※)や、ELNEC-Jコアカリキュラム看護師教育プログラムの開催手順を説明するハンドブック(ELNEC-Jコアカリキュラム看護師教育プログラム開催ハンドブック※)の提供と、その使用方法の説明
  • ネットワーキングの機会:ワークやその他のセッションを通して参加者どうしのつながりが生まれ、ネットワークを拡大できる。また、ELNEC-Jコアカリキュラム指導者の名簿を通して、近隣でネットワークを作ることもできる


※ELNEC-Jコアカリキュラム指導者用ガイド
ELNEC-Jコアカリキュラム指導者がELNEC-Jコアカリキュラム看護師教育プログラムを開催する際に、教材として使用するガイドであり、以下が含まれる
①モジュールの概要、②受講者用アウトライン、③プレゼンテーション用スライド、④指導者用アウトライン、⑤ケーススタディ、⑥補助教材、⑦文献リスト
※ELNEC-Jコアカリキュラム看護師教育プログラム開催ハンドブック
ELNEC-Jコアカリキュラム指導者がELNEC-Jコアカリキュラム看護師教育プログラムを開催する際に、企画・運営の方法などについて参照するハンドブック

ELNEC-Jコアカリキュラム指導者用ガイドおよびハンドブックは、2年に1回最新版に改訂している。


<ELNEC-Jコアカリキュラム指導者のミッション>

  • EOLケアに携わるすべての看護師に向けて、人々に質の高いEOLケアを提供できるように教育を行う
  • EOLケアの実践者と してモデルとなる実践を行う


本プログラムが参加者にもたらす影響に関する調査結果1)から、本プログラムは、参加者に教育を実践する自信を与え、EOLケアや緩和ケアに関する教育の企画・運営・評価を支援するだけでなく、各施設や地域において質の高いEOLケアや緩和ケアの達成をめざしてチームを統率することを促す、効果的な教育プログラムであることが明らかになりました。

ELNEC-Jコアカリキュラム看護師教育プログラムについて

目的

人々へ質の高いEOLケアを提供できるように、知識・技術を習得する

プログラムの内容

ELNEC-Jコアカリキュラム看護師教育プログラムは10のモジュールで構成されている。

  • Module 1:EOLケアにおける看護
  • Module 2:痛みのマネジメント
  • Module 3:症状マネジメント
  • Module 4:EOLケアにおける倫理的問題
  • Module 5:EOLケアにおける文化への配慮
  • Module 6:コミュニケーション -患者の意思決定を支えるために-
  • Module 7:喪失・悲嘆・死別
  • Module 8:臨死期のケア
  • Module 9:高齢者のEOLケア
  • Module10:質の高いEOLケアの達成

プログラムの特徴

  • 充実した内容:EOLケアに関する系統的・包括的な教育プログラムであるため、EOLケアに関する基本的知識が網羅され、充実した学習の機会となる
  • 実践的な内容:より実践に即したグループワークやロールプレイなどを取り入れた、インタラクティブな教育により、学びをすぐに実践に活かすことが出来る
  • 教育内容の均一化:日本の文化や実情に合わせて作成された指導者用ガイドを使用するため、教育内容の均一化をはかることが出来る
  • 効率的な運営:指導者用ガイドを使用し、開催ハンドブックを活用しながらプログラムを展開するため、企画・運営を効率的に行うことが出来る
  • ネットワークの構築:プログラムを開催することを通して、ELNEC-Jコアカリキュラム指導者同士や、受講者とのつながりも生まれ、新たな情報提供や相談の機会が得られ、ネットワークを拡大できる

ELNEC-Jの現況

各都道府県のELNEC-Jコアカリキュラム指導者数や、ELNEC-Jコアカリキュラム看護師教育プログラムの開催状況につきましては、以下のページにてお知らせしております。

https://www.jspm.ne.jp/seminar/elnecj/index.html

ELNEC-J関連資料

ウェブサイト

米国のELNECについての詳細は、以下の各ウェブサイトにてご確認ください。
取り組み:https://www.aacnnursing.org/ELNEC
現  況:https://www.aacnnursing.org/ELNEC/About

文献

ELNECの教育プログラムに関する文献は世界各国で多数発表されています。
我が国におけるELNEC-Jに関する文献は以下をご参照ください。

1)Takenouchi S. Miyashita, M. Tamura K. Kizawa Y. Kosugi S. (2011) Evaluation of the End-of-Life Nursing Education Consortium-Japan Faculty Development Program: Validity and Reliability of the "End-of-Life Nursing Education Questionnaire".  J Hosp Palliat Nurs. 13(6):368-375.
2)竹之内沙弥香 (2009) 緩和ケアやエンド・オブ・ライフ・ケアに携わる看護師のための教育プログラム End-of-Life Nursing Education Consortium Japan (ELNEC-J). 看護管理19(9): 782-785.
3)竹之内沙弥香 (2009) ELNEC-J指導者養成プログラムー地域・施設における質の高いエンド・オブ・ライフ・ケアの達成を目指して. 緩和ケア19(suppl): 139-142.
4)竹之内沙弥香, 田村恵子 (2009) End-of-Life Nursing Education Consortium Japan(ELNEC-J)指導者養成プログラム. 日本ホスピス緩和ケア研究振興財団「ホスピス緩和ケア白書」編集委員会 編. ホスピス緩和ケア白書2009. (p.38-42). 日本ホスピス緩和ケア研究振興財団:東京.
5)田村恵子 (2011) エンド・オブ・ライフ・ケアが語られる理由. EB Nursing 11(4): 563-573.
6)新幡智子 (2011) エンド・オブ・ライフ・ケアに関する教育の効果. EB Nursing 11(4): 574-578.
7)Takenouchi S, Sasahara T, Miyashita M, Kawa M, Umeda M, Kuwata M, Arahata T, Kizawa Y, Tamura K. (2017) Empowering Nurses Through Translating the End-of-Life Nursing Education Consortium: The End-of-Life Nursing Education Consortium-Japan Core Curriculum Project. J Hosp Palliat Nurs. 19(6):539-549.
8)Malloy P, Takenouchi S, Kim HS, Lu Y, Ferrell B. (2018) Providing Palliative Care Education: Showcasing Efforts of Asian Nurses. Asia Pac J Oncol Nurs. ,5(1):15-20. doi:10.4103/apjon.apjon_55_17
9)Takenouchi S.(2018) Empowering Nurses through End-of-Life Nursing Education in Asia: Nurses as Advocates for Patients' Dignity. Asia Pac J Oncol Nurs. 5(1):9-11. doi:10.4103/apjon.apjon_68_17
10)Arahata T, Miyashita M, Takenouchi S, Tamura K, Kizawa Y. (2018) Development of an Instrument for Evaluating Nurses' Knowledge and Attitude Toward End-of-Life Care: End-of-Life Nursing Education Consortium-Japan Core Quiz. J Hosp Palliat Nurs. 20(1):55-62. doi:10.1097/NJH.0000000000000393
11)酒井禎子(2021)【緩和ケアに活かすICT Information and Communication Technology】(Section V-1)緩和ケア×IT×教育 ELNEC-J(End-of-Life Nursing Education Consortium Japan).緩和ケア31(suppl.):128-131.