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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.80
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2018  80
学会印象記
Precision MedicineとImpeccable Assessment
山梨大学医学部 麻酔科  飯嶋 哲也

 2018年5月17日から19日までの3日間、パシフィコ横浜を主会場として日本麻酔科学会第65回学術集会が開催されました。会長は広島大学大学院麻酔蘇生学講座の河本 昌志教授。西の名門、広島大学初の日本麻酔科学会主催ということで、会員懇親会には越智 光夫学長(整形外科学、専門は膝関節外科)も出席され、広島大学挙げての盛り上がりを見せていました。参加者は1万622人とのこと。1万人を超える参加者の学術集会運営のために、日本緩和医療学会の学術大会と同様、近年は横浜と神戸の交互開催が通例となっています。また、学会長特別企画として桂 米二師匠が落語を演じました。演目は「青菜」と「変わり目」の2題。コミュニケーションスキル教育を目下のテーマとしている私としては落語家の話術には特別に感じ入るところがありました。
 次にご紹介したいのは東京大学 住谷 昌彦准教授の『痛み医療でのPrecision Medicine(精密医療)に向けて』という招請講演。住谷先生は精密医療を「従来の病名というカテゴリーで患者を分類し単一的な治療方針を提供するのではなく、患者個人から得られた精密な情報(biomarkerなど)をもとに病態・疾患をより詳細に階層化し、最適な診断・治療を提案しようという考え方」と定義。私は「精密な情報」のひとつとして疼痛の重症化に関与する遺伝子多型の特定があるという講演を聴きながら、WHOの緩和ケアの定義にある「impeccable assessment」という言葉を思い出していました注1)。そして、Precision medicineとは「impeccable assessment(的確な評価)」の結果に他ならないということなのだと思い至りました。要するに「診立て」をしっかりとすることがいつの時代でも大切であるということなのだと。この講演の後、最新医学情報にキャッチアップしていくだけでなく、時間に追われ、数値に追われ、麻酔科医としてとかく怠りがちな、患者さんのおなかをちゃんと触診するよう努力しようと思ったのは、私だけでしょうか?

注1) WHOの緩和ケアの定義は先日、緩和医療関連18学会とのコンセンサスのもと「定訳」が完成しました。日本緩和医療学会および特定非営利活動法人日本ホスピス緩和ケア協会のホームページなどで公開されています。

※日本緩和医療学会では下記URLに定訳を掲載しております。
 https://www.jspm.ne.jp/proposal/proposal.html

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