line
Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.80
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2018  80
Journal Club
早期乳癌におけるアロマターゼ阻害薬により誘発される
関節痛に対するデュロキセチンの有効性に関する多施設共同プラセボ対照比較試験
名古屋大学病院 薬剤部
宮崎 雅之
Henry NL, Unger JM, Schott AF, Fehrenbacher L, Flynn PJ, Prow DM, Sharer CW, Burton GV, Kuzma CS, Moseley A, Lew DL, Fisch MJ, Moinpour CM, Hershman DL, Wade JL 3rd. Randomized, Multicenter, Placebo-Controlled Clinical Trial of Duloxetine Versus Placebo for Aromatase Inhibitor-Associated Arthralgias in Early-Stage Breast Cancer: SWOG S1202. J Clin Oncol. 2018 Feb 1;36(4):326-332.

【目的】
 早期乳癌におけるアロマターゼ阻害薬(AI)は約半数で関節痛症状(AI-associated musculoskeletal symptoms: AIMSS)を引き起こし、AIのアドヒアランスに影響を及ぼすことがある。デュロキセチンは米国FDAにおいて様々な慢性疼痛疾患に対する鎮痛薬として承認されている。本試験ではAIMSSの治療としてデュロキセチンがプラセボに比較して関節痛を改善するかについて検討した。
【方法】
 本研究はランダム化二重盲検比較PhaseIII試験であり、閉経後早期乳癌に対してAIを開始し、平均の関節痛スコアが4/10以上の患者を対象とした。患者はデュロキセチンもしくはプラセボに1:1にランダマイズされ13週間服用した。主要評価項目は12週間の平均関節痛スコアとし、層別因子(ベースラインの疼痛スコアが4-6, 7-10, タキサン系の投与歴)で補正し、多変量線形回帰分析を行った。疼痛スコアがベースラインから2ポイント以上の減少を臨床的に顕著な効果があったと定義した。
【結果】
 299名が本試験にエントリーされ、127名がデュロキセチン(30r/day)、128名がプラセボの治療を受けた。12週における関節痛の平均疼痛スコアはデュロキセチン群がプラセボ群に比べて0.82ポイント低かった[95% CI, -1.24〜-0.40](p=0.0002)。関節痛スコアの最悪値、関節の硬直、疼痛による影響、機能の各エンドポイントなども同様の結果が得られた。副作用については、デュロキセチン投与において、倦怠感や悪心、口渇などが多く、その頻度(全グレード)は、デュロキセチンの方がプラセボに比べて高かった(デュロキセチン78% vs.プラセボ群50%)。しかし、グレード3の副作用頻度は同等だった。
【結論】
 早期乳癌がん患者におけるAIMSSに対するデュロキセチンはプラセボに比べて低グレードの副作用頻度が高いものの鎮痛効果に優れていることが明らかとなった。
【コメント】
 AIMSSの発現率は50%程度とも報告され、AIMSSが治療中断の原因となる場合も少なくない。AIMSSの原因は血中のエストロゲン濃度の低下が関与するともいわれているが、その詳細なメカニズムは明らかとされていない。セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害作用(SNRI)を有するデュロキセチンは、プラチナ製剤による末梢神経障害を改善することが報告されている(JAMA 2013;309:1359-67)。本研究ではAIMSSに対するデュロキセチンは、比較的早期からプラセボに比べて高い除痛効果が得られており、AIMSSに対する有効性が認められている。一方でプラセボ群においても一定の除痛効果が認められていることにも留意が必要である。

Close