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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.80
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2018  80
Journal Club
がん診断後1年間の症状の軌跡とその関連要因
名古屋大学大学院医学系研究科
看護学専攻基礎・臨床看護学講座  佐藤 一樹

Bubis LD, Davis L, Mahar A, Barbera L, Li Q, Moody L, Karanicolas P, Sutradhar R, Coburn NG. Symptom Burden in the First Year After Cancer Diagnosis: An Analysis of Patient-Reported Outcomes. J Clin Oncol. 2018 Apr 10;36(11):1103-1111. Epub 2018 Mar 1.PMID:29494259


【目的】
 がん診断後早期の症状を系統的かつ大規模に調査した研究はない。新規にがんと診断された患者の症状の経時的な傾向と症状の要因を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 カナダのオンタリオ州のがん登録で2007年〜2014年に新規にがんと診断され、1年以上生存した約12万名を対象とした。症状は外来受診時にESASにより前向きに評価し、がん登録と連結されたデータを後ろ向きに収集した。11段階のNRS評価で4点以上を中程度以上の症状と操作的に定義した。
【結果】
 約12万名の患者に述べ約73万回のESAS評価を行った。対象者のがん原発部位は、乳腺30%、消化器19%、泌尿器17%、呼吸器11%、婦人科10%の順であった。
 診断後1年間に1回でも中等度以上であった割合は、だるさ59%、全体的な調子55%、不安感44%、食欲不振43%、眠気39%、痛み37%、気分の落ち込み31%、息苦しさ29%、吐き気19%の順であった。中程度以上の症状を有する割合は、ほとんどの症状では診断後1カ月目がもっとも高かったが、吐き気は診断後6カ月まで経時的に増加し、その後低下した。
 診断後1年間での中程度以上の症状の有無に関連する独立したリスク要因は、がん原発部位、若年、併存疾患が多い、女性、低収入、都市部居住であった。
【結論】
 がん診断後1年間での中等度以上の症状を有する割合は、がん原発部位に依らず共通して高かった。がん診断後早期は複数の症状を有するリスクが高く、がん罹患早期からの支持療法の必要性が示唆された。中等度以上の症状を有するリスク要因として示された特性を有する患者は支持療法の優先的な介入対象となる。
【コメント】
 カナダのオンタリオ州ではがん対策の一環としてがんセンターの外来でのESAS評価データが中央に集約され、モニタリングされている。そのデータを用いて過去には死亡前6カ月間の症状の推移が示され(Seow, J Clin Oncol, 2011, PMID=21300920)、今回は診断後1年間の症状の推移が示された。系統的かつ大規模な患者報告アウトカムデータであり、がん患者の症状に関する貴重な疫学データである。

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