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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.78
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2018  78
Journal Club
重症COPD患者における呼吸困難感に対する吸入モルヒネの有効性
名古屋大学病院 薬剤部
宮崎 雅之

Janowiak P, Krajnik M, Podolec Z, Bandurski T, Damps-Konsta?ska I, Soba?ski P, Currow DC, Jassem E. Dosimetrically administered nebulized morphine for breathlessness in very severe chronic obstructive pulmonary disease: a randomized, controlled trial. BMC Pulm Med. 2017 Dec 11;17(1):186.

【目的】
 COPD患者に対する呼吸困難感緩和に対してモルヒネの全身投与が有効であることの報告はいくつか認められるが、吸入投与による効果については不明である。吸入投与による作用部位であるヒトの気管上皮細胞にオピオイド受容体が局在していることも近年明らかとなってきている。本研究では重症COPD患者に対する吸入モルヒネの効果を検証した。
【方法】
 本研究はクロスオーバー二重盲検比較試験であり、モルヒネ(4日間で1,2,3,5mg/回)もしくは生理食塩水の1日1回吸入をそれぞれ4日間吸入の8日間を投与スケジュールとした。呼吸困難感の程度を100oのvisual analogue scale(VAS)を用い、主要評価項目は、投与から15、30、60、120、180および240分後におけるベースラインからVASにて20o以上の減少とした。
【結果】
 適格患者11名中10名が試験を完遂できた。VAS変化量の平均値は、モルヒネ吸入で25.4o[95% CI, 14.0-41.5]、生理食塩水吸入で6.3o[95% CI, -11.5-19.5](p<0.0001)であり、Day2で顕著な呼吸困難改善効果が認められた(p<0.002)。またモルヒネ吸入では、初回吸入開始30分でVASの減少が認められ(p=0.005)、その現象は、240分後まで持続が認められた。モルヒネ吸入では苦味(8名)、吸入直後の一時的な眩暈(2名)が認められたものの、全体的に忍容性良好であり、呼吸数、心拍数、SpO2の変化はなく、重大な副作用は認められなかった。
【考察】
 重症COPD患者における呼吸困難感に対してモルヒネ吸入は、生理食塩水吸入に比べて顕著な症状緩和が認められた。この効果は、モルヒネの気管上皮細胞への直接作用によるものと考えられるが、肺からの吸収による全身効果による影響も否定できない。
【コメント】
 呼吸困難感に対するモルヒネの全身投与についてはがん患者における有効性に関する臨床試験がいくつかあり、「がん患者における呼吸器症状の緩和に関するガイドライン(2016年版)」においてもがん患者の呼吸困難に対してモルヒネの全身投与を行うことは推奨している。一方でモルヒネ吸入投与は、全身(皮下)投与と比較して効果、有害事象に差を認めなかった報告(J Pain Symptom Manage 2005;29:613-8)およびプラセボ吸入と比較して効果に有意差を認めなかった報告(Palliat Med 1996;10:64-5)からモルヒネの吸入投与を行わないことを提案している。本研究においては、モルヒネ吸入において早期から効果が得られているものの、少数例の比較試験であり、全身投与群との比較もなされていないことに留意が必要である。

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