Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.63
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2014  63
学会印象記
支える医療〜第16回日本在宅医学会大会に参加して
洞爺温泉病院 ホスピス長  岡本 拓也
 2014年3月1〜2日、浜松において第16回日本在宅医学会大会が開催されました。
 印象記を書くように言われましたが、日程の都合で、自分のセッション以外には出席できませんでした。従いまして、非常に限られた印象記になりますが、少しだけご報告をさせていただきます。
 在宅医療は、ご存じのように、私たちの分野である緩和医療と共に、近年、いわば脚光を浴び、急成長している分野です。学会参加者も急増しているようで、本大会には、2日間で約3000人の参加者、市民公開講座には約1000人の参加者があったそうです。
 私が講演したのは、指導医大会というプログラムの中でした。指導医大会では、「プリンシプルを学ぶ」というシリーズで、在宅に関連するさまざまな分野の学びを続けてきているようです。今回は、第4回とのことで、テーマは、「家庭医療」と「緩和ケア」でした。「家庭医療」の方は、「もはやヒポクラテスではいられない」新医師宣言プロジェクト http://www.ishisengen.net/ の活動で有名な、東京医療センターの尾藤誠司先生が担当し、「緩和ケア」の方を私が担当させていただきました。私に与えられたお題は、『緩和ケアのプリンシプル 在宅医療を支える多職種によるチーム医療 信念対立を中心に』で、のぞみの花クリニック院長の古賀友之先生が座長を勤めて下さいました。
 さて、抄録集に載っている小野宏志大会長挨拶には、こうあります。「年間160万人の人々をどこでどのように看取るかという議論も大切です。しかし、それ以上に、社会はその方たちの生き方をどのように支え、人それぞれはいかに納得できる人生を送ることができるかを考えることも大切だと思います。(中略)現在日本は、治す医療 においては世界でもトップレベルの水準を維持しています。それに比べて、支える医療においては先進国の中でも低い水準に甘んじています。これからの日本が安心して人生を全うできる社会になるには、もちろん治す医療も大切ですが、支える医療をより充実させていかなければなりません。(下線岡本)」全く同感であり、私の講演の中でも、改めて触れさせていただきました。
 今、在宅医療や緩和医療が注目されているのは、百年に一度とも言われる医療の大変革期において、大きな歴史的流れの中で起こるべくして起こっていることなのだと、『病院の世紀の理論』(猪飼周平著有斐閣)を読んだ時に思わされました。「医学モデル」や「治す医療」が重要でなくなるわけではありませんが、QOLを大事にする「生活モデル」や「支える医療」は、今後ますます重要性を増して参ります。「地域包括ケアシステム」という時代の潮流は、さらに大きな流れに成長していくことでしょう。別の時間帯にありました、私たちにはなじみの深いOPTIM関連のシンポジウムも、そのような流れの中でとらえることができます。
 思えば、私に与えられた講演のテーマなども、以前ならマニアックな内容に過ぎないと考えられたでしょうが、多職種との連携が必須のものとなる時代にあっては、非常に重要なテーマとなって参ります。私に講演のお鉢が回ってきた所以です。加えて、私は、ものごとを根本から考えるのが大好きなので、緩和ケアのプリンシプルというテーマも、すごく気に入りました。というわけで、とても楽しくしゃべりまくらせていただきました。最後はもちろん、ちゃっかりと、“緩和ケアの本質と医療の根本的問題を理解するために”書いた前著と、“真のケアを目指す医療者が、意味・価値の次元を適切に扱えるために”書いた新著の宣伝をして、90分間の講演を終了し、浜松と言えば「うな重」を堪能して、帰途につきました。

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