Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.63
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2014  63
Journal Club
がん突出痛:ヨーロッパのがん患者1000例の観察研究
神戸大学大学院医学研究科  山口 崇
Davies A,Buchanan A,Zeppetella G,Porta-Sales J,Likar R,Weismayr W,Slama O,Korhonen T,Filbet M,Poulain P,Mystakidou K,Ardavanis A,O'Brien T,Wilkinson P,Caraceni A,Zucco F,Zuurmond W,Andersen S,Damkier A,Vejlgaard T,Nauck F,Radbruch L,Sjolund KF,Stenberg M. Breakthrough cancer pain: An observational study of 1000 European oncology patients.J Pain Symptom Manage 2013;46:619-28.

【目的】
 がん患者における突出痛の特徴を明らかにする。
【方法】
 ヨーロッパ13ヶ国の28施設(専門緩和ケアまたは疼痛治療部門)の国際多施設共同観察研究である。2008-2011年の期間に参加施設で入院もしくは外来診療を受けた患者を対象とした。適格基準は、18歳以上・がんの診断・がん疼痛あり・がん突出痛あり・定期オピオイド鎮痛薬使用あり、とした。がん突出痛の診断は診断アルゴリズムにのっとって行われた。除外基準は、認知機能障害・各国の母国語が十分に理解できない、とした。使用された質問票は本研究のために作成されたもので、以下の3つの質問に分かれている;1)突出痛スクリーニング、2)突出痛の特徴、3)現在受けている突出痛に対する治療。
【結果】
 1000例が参加し、年齢の中央値は62歳(範囲:23-92歳)、男性が51%であった。440例(44%)がincident-type pain、415例(41.5%)がspontaneous-type pain、143例(14.3%)は両方の合併を報告していた。Incident-type pain を訴えた患者の内、324例は随意動作に伴うもので、67例では不随意動作に伴うものであった。突出痛の出現頻度の中央値は、3回/日(範囲:1回/月-24回/日)で、突出痛のタイプで違いは見られなかった。最大強度到達までの時間に関する質問は936例が回答し、中央値は10分(範囲:1分以内-240分)であった。Incident-typeおよびSpontaneous-typeでは、それぞれ、5分(範囲:1分以内-240分)、10分(範囲:1分以内-240分)であった。(無治療の場合の)突出痛の持続時間に関する質問は505例が回答し、中央値は60分(範囲:1分以内-360分)で、Incident-typeでは45分(範囲:1分以内-360分)、Spontaneoust-ypeでは60分(範囲:1分以内-360分)であった。Incident-typeは歩行や仕事に影響を及ぼし、Spontaneous-type は気分や睡眠へ影響を及ぼしていた。65.5%は突出痛に対する治療は有効であると報告した。
【結論】
 突出痛は不均一な病態であり、個々の症例および固体内の個々のエピソードでも一様ではない。突出痛はQoLへ影響を与え、直接的な苦痛と共に間接的に日常生活に対する影響を与える。
【コメント】
 本研究は、がん患者の突出痛の特徴を示した初めての大規模調査である。本研究の結果から、突出痛は1日数回・最大強度までの到達時間は10分以内・持続時間は60分程度という特徴が示唆された。今後、突出痛治療はこの特徴を踏まえた対応を心がけることが望まれるであろう。しかしながら、本研究は、突出痛の診断およびその後の調査に関しても患者の申告がそのまま使用されており、医療者の診断介入は関与していない。したがって、その結果に関して信頼性が担保されるか疑問が残る。今後、突出痛の診断および特徴の調査に関してより信頼性が担保された方法を用いた研究が待たれる。

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