Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.63
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2014  63
Journal Club
がんによって配偶者をなくした男性遺族の死別後4〜5年における
慢性疼痛と死別に対する心の準備に関する一般市民調査
東北大学大学院 緩和ケア看護学分野  竹内 真帆
Asgeirsdottir HG,Valdimarsdottir U,Furst CJ,Steineck G,Hauksdottir A.Low preparedness before the loss of a wife to cancer and the widower's chronic pain 4-5 years later―a population-based study. Psychooncology. 2013;22(12):2763-70.

【目的】
 本研究の目的は妻の死別時に心の準備ができていないことが、死別後4〜5年経過時の慢性疼痛にどのような影響を与えるかを明らかにすることである。
【方法】
 スウェーデンの一般市民のうち2000〜2001年にがんによって妻を亡くした男性907名を対象に横断的な質問紙調査を行った。質問の内容は死別時点における「妻の死に対する心の準備状況」と死別後6ヶ月および現在の自覚的な「身体の健康状態(慢性疼痛の有無と、特に「筋肉痛」、「筋緊張」、「頭痛」、「腰背部痛」、「バーンアウト」の各症状の有無)」と「心の健康状態(抑うつや不眠)」について尋ねる質問で構成された。先行研究から、「年齢が低い(38-61歳)」群と「年齢が高い(62-80歳)」群では前者の方が、死別時の「心の準備状況」が現在の「心の健康」に与える影響がより大きいことが明らかになっていることから、2群をサブグループとした解析を行った。
【結果】
 691名から回答が得られた(回答率76%)。回答者のうち、慢性疼痛を有するものは全体の12%(76名)であり、そのうち38-61歳に該当するものが41%、62-80歳に該当する者が59%を占めていた。心の準備ができていなかった「38-61歳」の男性遺族において、慢性疼痛の出現するリスクが高くなることが明らかになった(OR6.67;2.49-17.82)。また、慢性疼痛を経験した男性遺族の方が、抑うつ(RR2.21;1.31-3.74)、不安(RR 2.11;1.33-3.37)、睡眠障害(RR2.19;1.30-3.69)など、精神障害の出現リスクが高くなることが明らかになった。
【結論】
 妻の死別時に心の準備ができていないことにより、死別後4〜5年経過時の慢性疼痛の出現のリスクが高まる可能性が示唆された。さらに、慢性疼痛は精神障害のリスクを高める可能性があることが明らかになった。
【コメント】
 慢性疼痛を死別の長期的アウトカムとして、妻の死亡当時の心の準備状況との関連について、代表性のあるサンプルを用いて調査したことに本研究の新規性がある。死別時の心の準備状況が、遺族の心身における長期的な健康状態に関連するという知見は、患者の症状や予想される変化について丁寧に説明することや、家族も含めたEOLディスカッションの重要性について臨床的にも有用であると考えられる。

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