Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.63
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2014  63
Journal Club
パソコンやタブレットを用いたがん患者の症状自己評価・教育ツールに関する
多施設共同無作為化比較試験
東北大学大学院 緩和ケア看護学分野  佐藤 一樹
Berry DL, Hong F, Halpenny B, Partridge AH, Fann JR, Wolpin S, Lober WB, Bush NE, Parvathaneni U, Back AL, Amtmann D, Ford R. Electronic self-report assessment for cancer and self-care support:results of a multicenter randomized trial. J Clin Oncol. 2014;32(3):199-205.

【目的】
 外来受診前にタブレットを用いてがん患者が症状を自己評価し医療者に報告するツールであるElectronic Self-Report Assessment - Cancer(ESRA-C)の実施可能性と有効性が無作為化比較試験により示されている。しかし、症状の報告を受けても医師は身体的な症状にしか対応しないなど問題があった。本研究は、患者教育とコーチングの機能を追加したESRA-CIIの効果を検証する。
【方法】
 米国のがんセンター2施設の外来がん患者で、新規のがん治療を受ける779名を無作為に介入群と対照群に割りつけた。介入群はESRA-Cの症状自己評価を自宅のパソコンか外来受診時のタブレットを用いて実施できる。症状がある値以上の場合、症状の原因と対処方法、医療者への症状の伝え方(症状の頻度と程度、軽減・増悪因子、緩和してほしいこと) に関するメッセージが現れる。対照群は外来受診時のみESRA-Cに回答する。両群ともESRA-Cの回答結果は医師に伝えられる。ベースライン、がん治療開始後3〜6週、その2週後、治療終了後2〜4週の4時点で症状評価尺度Symptom Distress Scale?15(SDS-15)を評価し、SDS-15スコアの変化を主要評価項目とした。
【結果】
 SDS-15スコアの平均±標準偏差は、ベースライン、最終評価時点の順に、介入群24.3±6.7,24.2±6.7、対照群24.1±6.8,25.4±7.9であり、対照群の方が有意に症状スコアの悪化が認められた(変化の差+1.21,95%CI, 0.23to2.20;P=.02)。年齢のサブグループ別の分析では、50歳未満では症状スコアの変化に有意差はみられず(P=.4)、50歳以上では有意差がみられた(P=.002)。
【結論】
 がん患者の症状自己評価ツールに患者教育とコーチングの機能を追加したESRA-CIIは、がん治療後の症状悪化を軽減した。特に50歳以上で効果的であった。
【コメント】
 医療者が症状評価のデータを得ても活用しなければ意味をなさない。患者自らが症状緩和してほしいニードを伝えることで個別の症状への対応が促進されたと考えられる。高齢群で効果を認めたのは、医療者にニードを伝えることが得意ではなく、セルフケア方法に関する情報アクセスの良くない集団であったためであろう。タブレットによる症状自己評価システムを導入する場合に限らず、高齢者の症状緩和のニードを医療者が積極的に引き出すことが必要かもしれない。

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