Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.63
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2014  63
巻頭言
これでいいのか、緩和ケア
独立行政法人 国立がん研究センター東病院 緩和医療科  木下 寛也
 がん対策基本法、がん対策推進基本画といった政策、緩和ケア診療加算、がん患者カウンセリング料、がん性疼痛緩和指導管理料といった診療報酬、がん診療連携拠点病院の指定要件の見直し、などの効果もあり、緩和ケアは医療分野として一定の市民権を得るようになってきた。しかし、同時に疑問に思うことも増えてきた。今回は、私が日々考えている疑問のうち2つについて述べる。(本当はまだいくつが疑問ありますが、今回は2つにしておきます)
1 .がんと診断された時からの緩和ケア?
 Temelらの論文1)以降、早期からの緩和ケアが注目を浴び、第二期のがん対策推進基本計画では「がんと診断されたときからの緩和ケアの推進」と記載されている。がん対策推進に係る会議等の議事録を見ていると、いつも「緩和ケアチームが利用されていない」ことばかりが問題にされている。がん治療医が緩和ケアの第一提供者であることが忘れられている気がする。がん治療医が提供する緩和ケアは、がん治療医が主体となり考える問題である。緩和ケア医はがん治療医に協力する立場であると考えるが、現状は??? 
がん治療医と緩和ケア医の建設的な議論の場は皆無??? まずは、がん治療医に緩和ケア医が果たすべき役割について耳を傾ける機会が必要である。
 がんと診断された時からの専門的緩和ケアの提供について、現在の医療リソースから考えると、全てのがん患者に専門的緩和ケアを早期から提供することは不可能であることは自明である。では、どのような患者にどのくらい早期から関わり、何をすればいいのか?このことを考えていた時に丁度、Zimmermann らの早期からの緩和ケアに関するクラスターRCT2)に対する、コメント3)が出た。皆様も是非ご一読を!
2.チーム医療、多職種協働?
 緩和ケアチーム=チーム医療と間違った認識がある。正しくは、患者・家族+主治医チーム+緩和ケアケームでチーム医療である。また、多職種協働も誤用が多い。多職種が患者・家族に関わり、介入することが多職種協働と思われているらしい。医療従事者が次々と目の前に現れ、患者・家族はくたくただ。まるでファーストフードで、「ポテトもいかがですか」のように、「介護保険の手続きはしましたか」「薬剤指導はいかがですか」「退院前カンファレンスをしましょう」と責め立てられる。そのくせ、患者・家族が専門外のことを尋ねると、「それは私の専門ではないので〇〇さんに聞いて下さい」と患者・家族をたらい回しにする。患者・家族への支援が分断化(Fragmentation)している。全体に責任を持ってくれる医療従事者は不在???
 こんなに愚痴を述べた巻頭言は、前代未聞でしょうが、是非、これらの問題について一緒に考えてくれる方がいましたら、下記のアドレスまで連絡をいただければ幸いです。

hikinosh@east.ncc.go.jp

1) Temel JS et al. Early palliative care for patients with metastatic non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 363(8):733-42.2010.
2) Zimmermann C et al. Early palliative care for patients with advanced cancer: a clusterrandomised controlled trial. Lancet.2014
3) Block SD1, Billings JA. A need for scalable outpatient palliative care interventions. Lancet. 2014

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