Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.62
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2014  62
学会印象記
第37回日本死の臨床研究会年次大会
静岡県立静岡がんセンター 緩和医療科 心理療法士  枷場 美穂
 11月2・3日、今年式年遷宮が行われた出雲大社まで足を伸ばせばすぐそこという、島根県松江にて、「いのちをつなぐ“神秘の国出雲から考える”」とのテーマのもと、第37回日本死の臨床研究会年次大会が開催されました。旧暦10月を迎えようとする出雲の地には、全国八百万の神々が集いつつある時期だったようです(出雲では神在月、他の地域は神無月と呼ばれるとのこと)。もしかすると大会会場にも、いずこかの神様がまぎれていたのかもしれません。
 本大会では、2日間に亘り、密度の濃い充実したプログラムが組まれていました。今回はその中からふたつ取り上げてみたいと思います。
 パネルディスカッション「難しい場面の意思決定支援」では、緩和ケア医の阿部泰之氏、薬剤師の川村和美氏、専門看護師(老人看護)の西山みどり氏がそれぞれの立場から、“意思決定”と“自律”をテーマに見解を述べられ、活発な討議が行われました。討議の中では、“自律”はともすれば自己決定と同義で扱われることが指摘されました。「他者に“委ねる”ことを選ぶという己の決定もまた、自律と考えられるのではないか」との意見や、「患者も医療者も、ともに関係性に参加するプロセスそのものが重要ではないか」との意見を拝聴し、深く腑に落ちる感覚となりました。なお、フロアから医療者以外の意見として、「世代が移り変われば自己主張の在り方も変わり、その時代ごとに高齢者像は変化しうるだろう、その変化に合わせたケアの訓練がされているかも重要なのでは」との提起もあり、時代の趨勢を捉えていく視点について考えさせられました。
 国際交流委員会企画として、Dr. Kenneth Doka(ニューロッシェル・カレッジ大学院老年学教授)によるご講演、「Intuitive and Instrumental Grief 感情的グリーフと理論・行動的グリーフ」も大変興味深く聴かせていただきました。悲嘆の反応は個別性が高く、なかには悲嘆を感情よりも頭で論理的に捉えたり、悲嘆を行動として表す人もいます。そのような人たちには気持ちを訊くよりも、彼らがどのように日々行動しているかを問いかけることが、サポートの入り口になると説明されていました。ご講演の内容に、グリーフケアとしてお会いしていたあるご遺族の様子が重なって眼前に浮かび、今後の関わりにおける示唆をいただいたと感じました。
 最後に、同僚の看護師が、ポスター会場で各発表を丹念に見ながら、「この会場に患者さんへの愛が溢れていますね。」とそっとつぶやいていたことを、書き添えたいと思います。患者さん、ご家族との関わりを通して、時に苦慮し悩みながら学び、考えたことを大会では他の人と共有し、意見を交流させ、考えを発展させていきます。それらをこの先の日々に携え、また新たに患者さん、ご家族と出会っていくこと、それが「いのちを」通して次へと「つなぐ」ことになるのではないかと、今大会を通してあらためて感じています。

Close