Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.62
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2014  62
Journal Club
デキサメサゾンによるがん関連倦怠感の軽減
:進行がん患者における2重盲検プラセボ対照無作為化比較試験
神戸大学医学部附属病院 薬剤部  大田 泉

Yennurajalingam S, Frisbee-Hume S, Palmer JL, Delgado-Guay MO, Bull J, Phan AT, Tannir NM, Litton JK, Reddy A, Hui D, Dalal S, Massie L, Reddy SK, Bruera E.Reduction of cancer-related fatigue with dexamethasone: a double-blind, randomized, placebo-controlled trial in patients with advanced cancer.J Clin Oncol. 2013 Sep1;31(25):3076-82.

【目的】
 がん関連倦怠感(CRF)は進行がん患者の最も一般的な症状である。この研究の主要目的は、CRFに対するデキサメサゾンの効果を比較することである。
【方法】
 米国3施設の外来通院中のがん患者に対して行われた2重盲検無作為化比較試験である。CRFに関連した症状(倦怠感、疼痛、悪心、食欲不振、抑うつ、不安、不眠)のうちESASで4/10以上の症状を3項目以上認める進行がん患者を対象とした。その他の適格基準は、認知機能正常・感染状態にない・Hb>9mg/dl・4週以上の予後が見積もられる・糖尿病合併がない、など。患者はデキサメサゾン群(4mgを1日2回14日間投与)とプラセボ群に1:1で割り付けられた。主要評価項目はFunctional Assessment of Chronic Illness-Fatigue(FACIT-F)subscale の試験開始時から15日目の平均変化量である。その他の評価項目は、FAACT・ESAS・HADSであった。
【結果】
 最終的に132名が無作為に割り付けられ、うち84名の患者(デキサメタゾンン群43名;プラセボ群41名)が評価可能であった。デキサメサゾン群で女性の比率が多い以外に両群の患者背景情報に有意差は認めなかった。プラセボ群と比較してデキサメタゾン群で15日目のFACIT-Fsubscale は改善量は有意に大きかった(平均±標準偏差=9[±10.3]対3.1[±9.59];P=.008)。15日目のFACIT-Fの総スコア・physicalwell-beingスコアともに、デキサメサゾン群で有意に大きい改善を認めた。また、15日目におけるFAACTの改善もデキサメサゾン群で有意に大きかった。15日目のESASの身体症状スコアの合計はデキサメサゾン群で8日目・15日目ともに有意に改善していたが、ESASの各症状スコア・心理症状の合計のスコア・HADSでは有意な改善は認めなかった。有害事象の発生頻度としては両群間に有意差はみられなかった。(41/62対44/58;P=.14)。
【結論】
 デキサメサゾンは進行がん患者の倦怠感の改善にプラセボより有効である。
【コメント】
 本研究は、CRFの薬物療法に関する十分に信頼性と妥当性が検証された評価ツールを用いた初めての無作為化比較試験である。その結果、身体的苦痛のスコアに有意な改善を認めたものの、心理的苦痛のスコアに有意差を認めなかったことから、デキサメサゾンのCRFに対する効果は気分変調作用に起因するものではなく炎症性サイトカインの抑制によるものである可能性なども示唆される。また、有害事象においては、不眠をはじめとしたステロイドによる有害事象に有意差はみられなかった。しかし、本研究では、外来通院可能な比較的状態がよい患者が対象であり、より状態不良の患者に対しての有効性は不明である。また、観察期間は14日と比較的短期間のため、長期成績は不明である。さらに、本研究で用いられたデキサメサゾンの投与量は、本邦の通常臨床で倦怠感に対して使用される投与量と比較し非常に高用量である。そのため、欧米人と比較し、より体格の小さい日本人では過量投与となる可能性が懸念される。今後、さらなる検討が必要であると考える。

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