Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.62
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2014  62
Journal Club
予後をはっきり伝えること、見捨てないことを伝えること:
模擬面接ビデオを用いた緩和ケア移行時のコミュニケーションに関する介入研究
東北大学大学院 緩和ケア看護学分野  佐藤 一樹

van Vliet LM, van der Wall E, Plum NM, Bensing JM.Explicit prognostic information and reassurance about nonabandonment when entering palliative breast cancer care: fi ndings from a scripted videovignette study.J Clin Oncol. 2013 Sep 10;31(26):3242-9.

【目的】
 乳がん患者ががん治療を中止し緩和ケアに移行する際に、予後をはっきり伝えることと見捨てないことを伝えることの影響を明らかにする。
【方法】
 乳がん患者53名と一般女性53名を対象に、4通りの悪い知らせを伝える模擬面接のビデオを順番に視聴し、視聴前の不安と視聴後の不安、理解度、自己効力感、満足度を測定する試験を行った。ビデオのシナリオは、「予後をはっきり説明する(2年生存率は50%であり、個人によってそれより長いことも短いこともあり得る)」または「予後を明確には伝えない(個人差が大きいので分からないが、重大な疾患ではある)」×「見捨てないことを伝える(ケアは継続する、最善をつくす、決して見捨てない)」または「見捨てないことに言及しない」の4通りであった。
【結果】
 乳がん患者と一般女性で結果は同様であったので合算して示す。理解度・自己効力感・満足度について、「予後をはっきり伝える×見捨てないことを伝える」方法で評価が最も肯定的で、「予後をはっきり伝えない×見捨てないことを伝えない」方法で評価が最も否定的であった(すべてp<0.05)。多変量解析の結果、「予後をはっきり伝えること」は理解度・自己効力感・満足度の向上に関係し(p<0.001,p=0.004, p<0.001)、「見捨てないことを伝えること」は理解度・自己効力感・満足度の向上と不安の軽減に関連し(p=0.002,p<0.001,p<0.001,p=0.001)、「予後をはっきり伝える」方が理解度の改善がより大きく、「見捨てないことを伝える」方が不安・自己効力感・満足度の改善がより大きかった。情報を求めるコーピングスタイルを持つ対象に対し、「予後をはっきり伝えること」ことでアウトカムの改善は少ししかみられなかった。
【結論】
 予後をはっきり伝え、見捨てないことを伝えることは、多くの患者に対して望ましいコミュニケーション方法である可能性が示された。しかし、コミュニケーションに対する希望には個人差があることに配慮する必要がある。
【コメント】
 悪い知らせに対する「理解したい」と「理解されたい」という患者のニーズについて、情報提供と共感的態度を組み合わせたコミュニケーション方法の効果を検証した研究である。臨床への還元は、(1)情報を求めるタイプの患者に対して予後をはっきり伝えることが必ずしも良いコミュニケーション方法とは限らない、(2)がん治療の選択肢がない場合でも見捨てないことを伝える共感的態度が有用である、の2点にまとめられるであろう。「希望や楽しみをもって過ごすこと」は日本人の望ましい死の構成概念の1つである。希望のニーズに対して主治医は共感的態度を示すだけでなく、緩和ケアでも実際に継続して役割を果たすことが論文中で提言されている。しかし、本研究の対象者の半数は一般市民であることやビデオを視聴してその状況を想像した疑似体験に基づく評価であることが最大の限界であり、実際の臨床場面でも同様の反応であるかは検証が必要である。

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