Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.62
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2014  62
Current Insight
がん医療に携わる医師に対するコミュニケーション技術研修会(CST)のご紹介
国立病院機構 西群馬病院 精神腫瘍科・ 緩和ケアチーム  間島 竹彦
 2007年にがん対策基本法が施行され、がん対策推進基本計画の中で「がん医療における告知等の際には、がん患者に対する特段の配慮が必要であることから、医師のコミュニケーション技術の向上に努める」という施策が盛り込まれたことで、今日のがん医療においてはこれまで以上に、医療者の患者さんやご家族に対するコミュニケーションの重要性がクローズアップされるようになりました。緩和医療の領域においても、PEACEプロジェクトで行われている緩和ケア研修会の中に3時間の「コミュニケーション」のモジュールが組み込まれており、「悪い知らせを伝える」コミュニケーションのロールプレイがあります。そこでの感想をお聞きすると、「ロールプレイと分かっていながら、やはり悪い知らせを伝えられた直後には頭が真っ白になる」というような、患者体験がインパクトのあるものであることを示すお話がよく聞こえてきます。
 がん医療に携わる医師に対するコミュニケーション技術研修会(CST)は、「患者体験」が主たる目的の、緩和ケア研修会で行われるモジュールよりもさらに本格的な研修会です。CSTの目標は「患者さんの意向に沿った患者−医師間のコミュニケーションの促進を目指して、医師が患者に悪い知らせを伝える際に必要なコミュニケーション技術を習得すること」です。CSTは、SHAREプロトコルという、患者さんの意向を調査して得られた知見をもとに開発された、医師が患者に悪い知らせを伝える際の効果的なコミュニケーションを実践する態度や行動を、講義とロールプレイを通して学習するプログラムです。がん臨床経験年数が3年以上の医師を対象とし、1グループ3〜4名の参加者がそれぞれ1時間、医師役としてロールプレイをします。2日間で8回のロールプレイの時間があるため、ひとり2〜3回のロールプレイができます。ロールプレイは模擬患者(Simulated Patient;SP)さんを相手に、「難治がんを伝える」「再発・転移を伝える」「抗がん治療の中止を伝える」という設定で実際の診察の場面さながらに参加者が医師役を演じます。ロールプレイは1時間まるまる行うのではなく、細かく区切って観察者も含めたグループ全員でディスカッションしながら、どのようにコミュニケーションするのがよいか考えてゆく形で行われます。医師役としてロールプレイを行うことが重要な学習機会であるのは間違いないのですが、自分が医師役をしていないときに観察者として議論に参加することもまた、有意義な時間になります。SPさんの迫真の演技もあり、参加者からは「自分の面談スタイルを見直すよい機会になった」「患者さんの『気持ち』を探索し受け止めることの重要性に気づいた」といったような好評価を、毎回どの会場でもいただいています。
 ロールプレイの進行とグループのディスカッションを促進する役割を果たすのが、2名のファシリテーターです。メインのファシリテーターが主に進行役となり、サブファシリテーターはホワイトボードにコミュニケーションの内容などを板書したり、SPさんとの連絡を行ったりします。ある意味、ファシリテーターは参加者以上にコミュニケーションの勉強ができる立場と言えましょう。ファシリテーターはグループ内の議論を促進する役割であり、「コミュニケーションを教える」教師役ではありません。ファシリテーターは、参加者が自分自身で問題点に気付き、能動的にグループ内で議論を深めていくにはどうすればよいか、というところに腐心しながらファシリテートしていくのです。ですから、緩和ケアチームなどのコンサルテーションチームに参画する機会の多い医療者にとっては、ファシリテートの技術がチーム医療を運営する技術として役立つと思います。
 2007年から2012年の5年間において、CSTの受講者は683名、ファシリテーターは96名を数えました。今年度も東京、神戸、福岡で計4回のCSTと、ファシリテーター養成講習会が開催されています。CSTに参加した受講者からは、複数回の受講を希望する声も多数あり、こうした声を背景に、過去にCSTを受講した方々を対象にした「地固め研修会」を2012年度から開始、ここでは「怒り」「患者と家族の意向が異なる」場面でのコミュニケーションを取り扱っています。また、各ファシリテーターが独自に自分の施設や地域でCSTの個別開催を行うようにもなってきており、CSTの裾野が広がりつつあります。
 皆さんも是非、CSTに参加してみてはいかがでしょうか。必ずや、日々の臨床に役立つこと請け合いです。また、CSTに参加された先生方は地固め研修会へのご参加や、さらには、CSTファシリテーターの養成講習会に参加され、CSTファシリテーターになられるのはいかがでしょうか。興味を持たれた方は、日本サイコオンコロジー学会のCSTのホームページ(http://www.jpos-society.org/cst/)で詳細をご覧下さい。皆さんのご参加をお待ちしています。

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