Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.62
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2014  62
Current Insight
非がん患者の緩和ケア
慶應義塾大学医学部 精神神経科 慶應義塾大学病院 緩和ケアチーム  宮島 加耶
 以前より、緩和ケアの対象としてprogressive,incurable diseasesあるいはprogressive, lifethreatening conditionsという用語が用いられてきました。つまり、対象はがんに限りません。非がん疾患(non-malignant diseases)には、慢性心不全、COPDなどの呼吸器疾患、end-stageの腎疾患、HIV/AIDS、運動ニューロン疾患、さらには認知症など幅広い疾患が含まれます。しかし、一般に、緩和ケアという言葉はまだ「がん患者に対するもの」というイメージが強いのではないでしょうか。
 Palliative Medicine誌の2013年の第27(9)号では英国における非がん疾患の緩和ケアに関する特集が組まれました。Editorial1)では、十分に満たされていないニーズの現状、最近の研究について解説されています。その内容をここに簡単に紹介いたします。非がん患者の緩和ケアへのアクセスのバリアとしては、あらゆる積極的な治療をし尽くしてはじめて緩和ケアチームに依頼するという時期の問題、secondary care とprimary care のコミュニケーション不足などがあります。また、”end of life care”という表現もバリアの一つであり、深刻な疾患とともに生きること(living with serious illness)を強調する方が、早期からの介入が可能となるかもしれません。現在、心不全患者を対象として通常のケアを行った群と早期からの緩和ケアを行った群とで患者のアウトカムを比較するrandomised controlledtrial(RCT)が進行中です。また、近年、心不全患者を対象とした、日常臨床での使用を目的とする緩和ケアのニーズのアセスメントツールに関する研究が報告され、現在、パーキンソン病の患者を対象として同様の研究が行われています。さらに、呼吸苦に対する少量のモルヒネの効果についてはエビデンスがあるとされているものの、これまでのRCTの結果は一致せず、呼吸苦への複合的な介入に関するRCTが進行中です。Editorialの筆者は最後に、最適な疾患に対する治療と最適な症状緩和は二者択一ではなく統合されるべきであり、“誰に”“何を”“どのように”緩和ケアとして提供するかが明らかにされるべきである、と強調しています。
 わが国でも、非がん患者の緩和ケアへの関心は高まっていると考えられます。第18回日本緩和医療学会学術大会の非がん疾患に対する緩和ケアのシンポジウムでは、非がん疾患の緩和ケアチーム設立、小児専門病院や在宅における緩和ケアに関する話題があり、興味深く聴かせていただきました。当院の緩和ケアチームでは2013年の夏より、非がん患者の緩和ケアの勉強会を始めました。きっかけは、ある内科医からの「肺高血圧症とか循環器疾患の患者さんのケアに悩んでいるスタッフが多いのだけど、一緒に何かできないかな」という誘いでした。ふだんがんの緩和ケアに携わっている緩和ケアチームのメンバーと非がん疾患の診療に携わっている医師・看護師とで集まり、お互いの経験を共有しながら、患者・家族からどのようなことが求められているか、どのような支援ができるかを一緒に考える、そんな会にしたいと思います。

1)Johnson M, Fallon M. Just good care? Thepalliative care of those with non-malignantdisease. Palliative Medicine 2013; 27(9):803-804.

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