Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.62
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2014  62
巻頭言
これからの「緩和ケア」で求められていくこと
国立がん研究センター がん対策情報センター がん医療支援研究部  加藤 雅志
 「『緩和ケア』が変わった」
 ここ数年、そのような話をよく耳にします。日々、緩和ケアに携わっていると、その変化を感じることは難しいかもしれませんが、ふと振り返ってみると、様々な変化に気づきます。皆様はどのような変化を感じるでしょうか。
 まだ緩和ケアという言葉が医療従事者にすら浸透していなかったような頃、緩和ケアを実践する第一人者たちが緩和ケアを牽引し、医療で欠かせない重要な領域にしてきました。
 そして、2008年6月のがん対策基本法の成立が、緩和ケアの一つの大きな転換期だったと私は考えています。以降、緩和ケアの推進者には、緩和ケアの専門家だけではなく、患者やその家族を中心とする「緩和ケアの享受者」も加わるようになりました。政府のがん対策の全体の方向性を定める「がん対策推進基本計画」を策定するため、政府は「がん対策推進協議会」を設置しました。この審議会は、委員に患者やその家族を加えた画期的なものです。当時、私は厚生労働省のがん対策の担当官として、行政の立場から緩和ケアの施策に関わっていましたが、患者の方々の意向を可能な限り尊重できるよう、がん対策の方向性が定められていきました。それらの一部は、緩和ケアの専門家からすると“途方もない“ように感じるものだったかもしれません。たとえば、10万人はいるかもしれないと言われるがん診療に携わるすべての医師に、緩和ケア研修を修了させるという目標は、緩和ケアの専門家が自発的に立てられるものではなかったと思います。このように、緩和ケアの担い手以外からの要望が制度となっていくことが、がん対策基本法以降みられるようになりました。
 今、緩和ケアについて何が課題とされているのか。それは、「質」です。
 医療の質は、緩和ケアだけではなく、医療のすべてに該当する課題です。特に、がん医療においては、がん拠点病院の整備が進むなど、外形的な体制は整いつつあります。がん拠点病院には緩和ケアチームの設置が義務付けられていることもあり、理屈の上では全国で専門的な緩和ケアが提供できる体制が整備されたことになります。しかし、必ずしもそうなっていない現実があります。
 「緩和ケアを提供しているはずの病院で適切な緩和ケアを受けることができなかった」というような事例が、厚生労働省に繰り返し報告されるような状況を踏まえ、厚生労働省では、緩和ケアの質を高めていくためにどのような取り組みをしていくべきなのかという議論が進められています。
 緩和ケアの質を高めていくためにどうしていけばよいのか。その方策については、実際の担い手である緩和ケアに携わる医療従事者が積極的に示していくべきだと考えています。監査のような方法で質を評価していくことは好ましくありません。自らが課題を明らかにして改善に取り組むこと、そして、当事者同士が相互に訪問し課題や改善策について話し合い、学びあうようなピアレビューを実施していくことなどは有効ではなかろうかと考えたりしています。ただし、画一的なものではなく、施設や地域の状況に合わせ、それぞれにとって最適な方法で実施されるべきでしょう。皆様はどのようにお考えになりますでしょうか。

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