Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.61
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2013  61
Journal Club
化学療法による末梢神経障害に伴う疼痛・身体機能・QOLに対するデュロキセチンの効果
神戸大学医学部附属病院 腫瘍センター 緩和ケアチーム  山口 崇

Smith EM,Pang H,Cirrincione C,Fleishman S,Paskett ED,Ahles T,Bressler LR,Fadul CE,Knox C,Le-Lindqwister N,Gilman PB,Shapiro CL;Alliance for Clinical Trials in Oncology.Eff ect of duloxetine on pain, function, and quality of life among patients with chemotherapy-induced painful peripheral neuropathy: A randomized clinical trial.JAMA. 2013 Apr 3;309(13):1359-67.

【目的】
 主要目的は、デュロキセチンが化学療法による末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheralneuropathy:CIPN)に伴う痛みを軽減するか評価すること。副次目的として、デュロキセチンのQOL・身体機能に対する影響と有害事象に関して評価する。
【方法】
 米国の8施設において行われた二重盲検プラセボ対象無作為化クロスオーバー試験。CIPNの診断は、病歴・深部腱反射の消失、神経障害性化学療法後に生じた左右対称性の手袋-靴下型の感覚低下もしくは異常感覚、のいずれかの有無によって判断された。対象は当初paclitaxelとoxaliplatin使用関連のみに限定したが、後にdocetaxel・cisplatinにも対象を広げた。適格基準は以下:25歳以上、CTCAE ver3.0grade1以上の神経痛、化学療法終了3カ月以上期間持続する平均で10段階評価中4以上の神経障害性疼痛。原疾患の種類・病期による限定は行わなかった。試験開始時点でその他の神経障害性化学療法を継続している、神経障害の既往がある場合は除外された。
 参加者はGroup A(Week 1-5:デュロキセチン→Week 8-12:プラセボ)またはGroup B(プラセボ→デュロキセチン)1:1に無作為に割り付けされた。デュロキセチンは1週目に30mg/日、2-5週目は60mg/日で投与された。試験開始2週間で投与量が安定している場合決められた鎮痛薬の併用は許容されたが、セロトニン作動に影響する薬剤の併用は禁止された。
 主要評価項目はweek6のday1におけるBPI-SFで評価した「平均の痛み」とした。臨床的に有意な数値差は、0.98と設定した。QOLはFACT/GOGNtxで、身体機能はBPI-SFの下位項目で、有害事象はCTCAE ver3.0で評価した。
【結果】
 231例がリクルートされ、Group A に115例、Group B に116例が割り付けられた。Group A では109例が実際にデュロキセチン投与され、88例が投与を完遂した。Group B では111例が実際にプラセボを投与され、99例が投与を完遂した。GroupA 11%、Group B 1% が有害事象で脱落した。両群の背景情報は有意な差はなく、試験開始時の疼痛はGroup A 6.1、Group B 5.6 で有意差はなかった。疼痛はGroup A では5週後に平均1.06(95%CI:0.72-1.40) 、Group B では0.34(95%CI: 0.01-0.66)低下し、Group A で有意に低下が大きかった(p=.003)。Group A ではGroup B と比較して、疼痛 強度が30%以上低下するRelative risk(RR)は1.96(95%CI:1.15-3.35)、50%以上低下するRRは2.43(95%CI:1.11-5.30)であった。原因薬剤による違いとしては、oxaliplatin関連CIPNでは有意に疼痛強度が低下していたが、taxane関連CIPNでは有意な効果は認めなかった。
 副次評価項目では、Group Aの方が生活の支障はより改善する傾向が見られ、QOLもより改善する傾向が見られた。重大な有害事象はいずれの群でも報告されなかった。
【結論】
 5週間のデュロキセチン投与はCIPNに伴う痛みを有意に改善した。
【コメント】
 本研究はデュロキセチンの有痛性CIPNに対する効果を示した初めての大規模臨床研究である。しかしながら、本研究でのデュロキセチンが有効性を示したのはあくまでも有痛性CIPNの「痛み」であり、「しびれ」に対する効果は検討されていない。したがって、有痛性CIPNを有する症例にのみ本研究の結果を当てはめることが可能であると考えられる。また、サブ解析で示されているように、oxialiplatin関連の有痛性CIPNでは有意な効果であったが、taxane関連CIPNでは有意な効果は示せなかったことも臨床に研究結果を当てはめる際には注意が必要である。また、結果的にITT解析は行われず、その上デュロキセチン投与群の脱落例が有意に多かった、という結果にも注意をする必要がある。さらに、デュロキセチンはもともと抗うつ薬として使用されている薬剤であるが、今回の研究では抑うつとの関連は評価されていない。このようにいくつかの限界があることを踏まえながら、今回の研究結果を解釈する必要がある。

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