Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.61
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2013  61
Journal Club
緩和ケアをうけたがん患者遺族の遷延性悲嘆のリスクファクターに関する縦断的研究
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野  竹内 真帆

Thomas K,Hudson P,Trauer T,Remedios S,Clarke D.Risk Factors for Developing Prolonged Greif During Bereavement in Family Carers of Cancer Patients in Palliative Care: A Longitunal Study.J Pain Symptom Manage.2013 Aug 19. pii: S0885-3924(13)00367-9.

【目的】
 緩和ケアを受ける患者の家族は、介護や死別を通して、高い心理的ストレスを受けると報告されている。本研究の目的は、死別後6ヶ月および13か月における遺族の遷延性悲嘆の症状の出現や程度を、死別以前の情報から予測可能であるかを明らかにすることである。
【方法】
 オーストラリア国内で緩和ケアを提供する3施設に入院した患者の家族を、緩和ケア導入時(T1)にリクルートし、1)家族に関連する心理社会的因子11因子(自尊心、家族支援、経済的影響、スケジュールへの影響、健康への影響、配偶者への依存、ソーシャルサポート、家族機能、楽観的思考、介護に対する受けとめ)、2)家族の心理的ストレス因子4因子(予期悲嘆、不安、抑うつ、意欲喪失)をそれぞれ妥当性が明らかにされている評価尺度を用いて測定した。死別後6ヶ月(T2)、13ヶ月(T3)では、T1の尺度を繰り返し測定し(予期悲嘆は遷延性悲嘆の尺度に変更した)、それに加えてPTSDの評価尺度を調査した。
【結果】
 992名の対象のうち、301名(30%)が研究参加に対して応諾した(T1)。そのうちT2では167名、T3では143名が参加した。T1における予期悲嘆は、T2、T3における遷延性悲嘆(PG)および遷延性悲嘆障害(PGD)の強い予測因子であった。その他、PGのリスクファクターとしては、死別への依存の強さ、患者との配偶者関係、介護負担の重さ、家族機能の乏しさ、楽観的思考の程度の低さが認められた。T3時点でPGDの基準に当てはまるものは11%であったが、その3分の2が6か月時点のPGの得点から予測可能であることが明らかになった。
【結論】
 緩和ケア導入時点で予期悲嘆のスクリーニングをすることは、PGDのリスクの高い家族を同定する方法として、最も効果的だと考えられる。本研究結果から、PGを抱える遺族を同定する方法として、死別後6ヶ月時点でのスクリーニングを推奨する。
【コメント】
 PGまたはPGDについての縦断的調査研究は数少なく、本研究は貴重なデータを提供したものと考えられる。しかし、研究限界として、サンプル数や代表性の問題がある。また、PGまたはPGDは診断基準や定義が確立されておらず、他の精神疾患との区別も曖昧であり、他の先行研究ではPGDと抑うつ・不安障害などの併存の割合の高さも指摘されている。今後は死別と、PGDおよび他の精神疾患との関連性も明らかにしていく必要がある。

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