Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.61
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2013  61
Journal Club
成人がん患者の診断後1年間での不安と抑うつの推移とその関連要因
東北大学大学院 緩和ケア看護学分野  佐藤 一樹
Boyes AW,Girgis A,D'Este CA,Zucca AC,Lecathelinais C,Carey ML.Prevalence and predictors of the short-term trajectory of anxiety and depression in the first year after a cancer diagnosis: a population-based longitudinal study.J Clin Oncol. 2013;31(21):2724-9.

 

【目的】
 がん治療から治療後での心理的適応を調査した研究は少ない。成人がん患者の不安と抑うつの有症率の推移とその関連要因を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 オーストラリアの2つのがん登録を用い、診断後6ヶ月以内の成人がん患者3315名を抽出し、診断後6ヶ月後と12ヶ月後に質問紙調査を行った。不安と抑うつはHADSにより測定し、カットオフ以上を「症状あり」とした。不安と抑うつの2時点での推移を次の4つに分類した:なし→なし(無症状)、あり→なし(回復)、なし→あり(遅発)、あり→あり(慢性)。また、診断12ヶ月後での不安・抑うつの関連要因として、6ヶ月後での不安・抑うつ、患者背景、疾患・治療背景、健康行動、心理・社会的要因を調査した。
【結果】
 1154名から有効回答を得た。がん原発部位は、前立腺28%、乳腺16%、悪性黒色腫15%、血液14%、大腸12%の順であった。
 がん診断後6ヶ月→12ヶ月での有症率は、不安では22%→21%、抑うつでは13%→13%であり、ほとんど一定であった。不安の推移は、なし→なし70%、あり→なし8%、なし→あり7%、あり→あり14%であった。抑うつの推移は、なし→なし82%、あり→なし6%、なし→あり6%、あり→あり6%であった。
 がん診断後12ヶ月での不安は、女性で(OR=1.8)、6ヶ月後時点で不安や抑うつがあり(OR=10.7,OR=1.9)、不安のとらわれや闘争心のコーピングス成人がん患者の診断後1年間での不安と抑うつの推移とその関連要因タイルがある(OR=1.6,OR=1.7)ほど有意に症状を有していた。がん診断後12ヶ月での抑うつは、肺がんで、6ヶ月後時点で不安や抑うつがあり(OR=2.6,OR=6.9)、運動不足であり(OR=2.1)、回避のコーピングスタイルがある(OR=1.7)ほど有意に症状を有していた。
【結論】
 成人がん患者の不安と抑うつの有症率とその推移を明らかにした。ハイリスク患者に対象を限定した精神問題のスクリーニングによる早期介入が有用であろう。
【コメント】
 脆弱性(vulnerability)の対義語として、レジリエンス(回復力、resilience)という用語が近年提唱されている。著者らはこの概念に着目し、不安と抑うつの推移を明らかにした点に新規性がある。がん患者の代表性の高いコホート研究である強みに対して、がん診断後12ヶ月間での治療や再発を考慮していないことが大きな限界である。また、長期生存がんサバイバーの不安と抑うつに関する系統的レビューが最近発表された(Lancet Oncol.2013;14(8):721-32.)。不安と抑うつの有症率はそれぞれ17.9%,11.6%であり、本研究と大きく異ならなかった。

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