Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.61
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2013  61
口演20
CART
座長・報告  要町病院 腹水治療センター  松ア 圭祐
座長  名古屋徳洲会総合病院 外科  坂本 雅樹
 今回、日本緩和医療学会学術大会において初めてCARTセッションとして演題募集がなされ、8題が採択された。
 1題目は、東京大学の伊藤先生から腹水中サイトカインの検討を行った結果、腹水中のIL-6、IL-8濃度がCART施行後の発熱と相関し、IL-10濃度が良好な予後と関連することが報告された。今後CARTによるサイトカインの変化、濾過濃縮液の静注による生体、特に免疫系への影響が解明されることが期待される。
 2題目は、原土井病院の末満先生から癌性胸水に対してCARTに加えて胸膜癒着術を併用することで、胸水マネージメントが可能になった1例が報告された。
 3題目は、札幌厚生病院の飯田先生からがん終末期難治性腹水14例に対して計26回の改良型CART(KM-CART)を施行し、安全かつ効果的に施行できたと報告された。
 4題目は、とちの木病院の鹿島先生から難治性腹水25例に対して計96回のKM-CARTを施行し、有効性、安全性に優れるため、積極的に施行すべきであることが発表された。また、「がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン」の悪性腹水に対する治療にCARTが記載されることを期待したいと結ばれた。
 5題目は、日生病院の三木先生からKM-CARTにおける濾過膜洗浄液を再濾過することにより、アルブミンの回収率を向上させる工夫が報告された。
 6題目は、久保田げんきクリニックの行田先生からCARTの普及に関する問題点が報告された。
 7題目は、愛知県がんセンターの近藤先生から腹腔静脈シャント術は治療関連死亡割合が高く、その適応における患者選択の重要性が報告された。
 8題目は、東京慈恵会医大柏病院の濱口先生から、難治性腹水に対してトルバプタンが奏功して在宅移行が可能になった卵巣がん症例が報告された。トルバプタンはがん性腹水に対しても臨床治験が進行しており、今後難治性腹水治療薬として大いに期待が持てる利尿剤である。
 CARTは1981年に難治性腹水治療法として保険承認された古い治療法であるが、多量の細胞成分や粘液などを含むがん性腹水に対しては、その副作用と処理能力から1980年代後半には適応不能とされ、全く普及していないのが現状である。今回、発熱も軽度で濾過膜洗浄機能を有して大量のがん性腹水も短時間で処理可能な改良型のKM-CARTに関する演題が3題報告された。『腹水は抜いたら弱る』という医療界の常識の前で苦しんでいる多くの腹水患者さんの苦痛を一日も早く緩和するためにも、安全でより効果的なCARTの早期普及と医療現場における腹水に対する積極的アプローチが期待される。

Close