Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.61
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2013  61
ランチョンセミナー6(2日目)
Nutritional and metabolic therapy for cancer patients with cachexia
座長・報告  名古屋市立大学大学院 消化器外科学  竹山 廣光
1)悪液質の診断と定義
 がん悪液質は多因子性の症候群で、通常の栄養サポートでは改善しない進行性の筋肉減少(脂肪減少の有無は問わない)と進行性の機能障害と定義している。病態生理学的には、様々な程度に摂食低下や代謝異常が組み合わさり負の窒素バランス、エネルギーバランスが特徴である。悪液質の診断の基本的合意として前悪液質、悪液質、治療不応性悪液質に分けている。
2)サルコペニア、悪液質のもたらす結果
 悪液質、サルコペニアでは化学療法の毒性がたかまり、肥満の有無にかかわらず、生命予後が不良である。また、術後感染も増え回復が遅れ医療費も高くなる。
3)悪液質における代謝
 がん組織からは侵害受容性刺激が脳組織に向かい食欲不振、性機能低下をきたす。サイトカインなどにより筋肉崩壊、脂質融解、急性期蛋白産生、インスリン抵抗性を招く。さらに食欲不振をきたし、握力、退院時の体重、食事摂取量の低下、入院期間の延長をもたらす。体重減少に関わる遺伝子の 解析が進んでおり異常遺伝子が多いほど生命予後が不良である。がんと免疫細胞から産生されるサイトカインはがんを増殖させ疲労感や抑うつ認知障害など精神障害をもたらす。
4)治療法
 栄養不良のがん患者における早期栄養介入、集学的チーム医療、適切ながん治療、十分な栄養サポート、運動療法、貧血対策、抗炎症治療、良質な支持療法など多様な治療で予後を改善できる。ω―3軽脂肪酸であるEPA,DHAはLBMと体重を増加させる。また、血清中PGE2濃度を下げ抗炎症性に働く 。EPAを多く含む経腸栄養食品は、食道がん術後の合併症では通常の経腸栄養食品と変わらなかったが、体重はよく維持できた。肺がんではQOLを上げることができた。
5)結語
 進行がんに対する薬剤中心の治療は、しばしば最適ではない。
 栄養はがんの遺伝子や代謝変化を再度変化させるエネルギーや栄養素になりうる。
 ω―3系脂肪酸を供給する栄養療法は悪液質の予防や治療になり、がん治療の効果を増強する。

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