Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.61
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2013  61
ランチョンセミナー7(1日目)
がん治療を支える口腔の感染症対策
座長・報告  横浜市立みなと赤十字病院 歯科口腔外科  向山 仁
 がん治療期の患者においては口腔管理を怠れば、QOLの低下のみならず、診療計画にも影響がでてくる。また、終末期医療の一部として口腔管理は患者QOLを維持させる方法として注目されている。このランチョンセミナーでは岩渕博史先生に口腔管理について時間余すところなくご講演をいただいた。会場も本講演への関心度の高さゆえ満員の盛況であった。
 好中球が減少した患者が口腔粘膜炎を発症すると敗血症の発生率が4倍にもなることから、口腔管理は重要であるが、がん治療中の口腔管理は歯磨き、粘膜清掃、含嗽、保湿などセルフケアが中心であり、その内容は限定的である。セルフケアを円滑に行うにはがん治療前に歯科において口腔ケアを行うことが重要である。それは最も効果が高く持続性があり、セルフケアや看護師のケアの効率を上げることができるからである。それゆえ、がん治療前の診療計画や看護計画の一環として口腔管理を行い、口腔の感染源を少なく口腔粘膜炎の発症を管理してゆくことが重要であることが示された。
 口腔管理は1)口腔を清潔にして、口腔の衛生状態を保つことで口腔粘膜炎の発症や炎症程度を抑えるようにすること、2)歯周病やその他の口腔感染源をコントロールすること、3)口腔粘膜の日和見感染を防ぐために常在菌を維持し口腔環境を保持すること、4)口腔内を保湿すること、が要点であった。
 口腔の日和見感染症としてはカンジダ菌が関与していることが多く、口腔粘膜炎の重症度もカンジダ菌共存下ではgradeが上がることが示唆されており、カンジダ菌を念頭においての口腔観察やカンジダ対策が必要である。また、口腔の乾燥は味覚異常や口腔内の疼痛、摂食嚥下障害などに関連し、QOLの低下を招いてしまう。さらに菌叢の変化によりカンジダ菌を代表とするさまざまな細菌の日和見感染の原因となる。そこで、口腔乾燥が生じてきたら躊躇なく保湿剤を使用してゆくことも示された。
 がん治療期から終末期に至る口腔管理について詳細に解説された非常に有意義なご講演であった。

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