Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.61
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2013  61
特別企画3
サイコオンコロジー入門
座長・報告  岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 生体制御科学専攻  内富 庸介
座長  埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科  大西 秀樹
 今でも振返り症例として多く挙げられる、せん妄、コミュニケーション、不眠をテーマに選び、サイコオンコロジー入門編として企画した。ある程度予想はしていたが、プログラムの関係か、狭い会場の数倍の人だかりができてしまい、申し訳なく感じた。
 東京医科歯科大学大学院心療・緩和医療学分野の松島英介先生から、がん患者のせん妄について、特に半数を占める、低活動型せん妄が詳解された。一般に、無関心、注意減退、発語が少なく緩徐、不活発、動作緩慢、目がうつろ、無感動などが挙げられているが、うつ病と誤診されたり、気付かれないままに最期を迎えていたりすることも多い。治療には誘発要因を軽減するとともに、直接要因の検索とその対応が必要であるが、脳転移がある場合や身体状態が重症の場合のように、極めて不自然な脳機能状態にあるときには、治療目標をせん妄の完全な改善ではなく、症状コントロールを目指すことに設定することも必要である。
 名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野の明智龍男先生は、コミュニケーションについて詳解された。言葉として表現できない患者のこころの苦痛の背景を汲み取りながら、時として患者自身でさえ気付いていない苦痛に対して適切に「応え」、「手当てを行う」ことがより良いコミュニケーションとなる。深い患者理解に基づいた医療者の温かい一言あるいは所作は、時として、どんな薬剤ももたらし得ない大きな症状緩和をもたらす。心理的防衛機制、コミュニケーション・スキルのエッセンスについて紹介された。
 国立がん研究センター東病院臨床開発センター精神腫瘍学開発分野の小川朝生先生から、安易に扱われがちな不眠について詳解された。不眠はがん患者の23-60%に認められ、慢性化する傾向があり、平均して48ヶ月に及ぶ。不眠は日中の活動度の低下を通して、QOLに影響するため、見落とせない重要な対応ポイントである。鑑別を要する睡眠障害に鉄欠乏性貧血を伴うRestless leg syndrome 、ステロイドが誘発する不眠、頭頸部がん患者の術後や気道の変形・閉塞による閉塞性睡眠時無呼吸症候群が発症することが知られている。聴衆を魅了する内容ばかりで、次大会は広い会場での関連セッションを望む。

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