Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.61
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2013  61
ワークショップ17
ホスピスの原点に立ち返る
座長・報告  聖隷三方原病院 ホスピス科  井上  聡
座長  淀川キリスト教病院 看護部  田村 恵子
 ホスピスの原点は、「死に至る前のわずかな時であってもすべての人に平等に人間らしいケアを提供すること」である。この原点に立ち返り、心を込めたホスピスケアをいかに実践しているかについて4名の演者に発表していただき、その後討論した。
 大井裕子先生は、「聖ヨハネホスピスが大切にしているホスピスケアの原点」と題して、事例を交えながらスピリチュアルケアの大切さや死の臨床におけるコミュニケーションスキルの向上の必要性について発表された。患者のニーズを的確に把握し、そのニーズに応えていくプロセスの共有こそがスピリチュアルケアであり、信頼関係の構築やわかりやすい情報提示、チームによるケアなど特別なことではなく丁寧に行うことが大切であると話された。
 柏谷優子先生は、「傍らに添うものとしてのありようを問う」と題して、緩和ケア病棟や現在の大学病院での体験を事例を交えながら話され、ケアリングの構成要素や患者をあたたかくもてなす型医療を紹介しつつ患者の変化と喪失の連続を支えるのが看護であると話された。看護師は患者にとって重要な環境要因のひとつであり、自分自身のありようを整えるためには、共に今を生きる生活者として目の前にある人を大切に思うこころ、尊敬をもって人として遇する態度であると話された。
 前野宏先生は、「ホスピスのこころを深め、スピリチュアルケアへ」題して、ホスピスの原点をホスピスのこころとして話された。ホスピスのこころとは、弱さに仕えるこころであると定義し、患者も医療者も共にいずれ死ぬべき弱さを抱えた人間として平等であり、弱さにおける連帯であると話された。終末期にある人の傍らに存在させていただくために自身の人間力を常に強めていく努力をしなければならず、それはホスピスのこころを深める作業であり、次のステップであるスピリチュアルケアに繋がってゆくと話された。
 志真泰夫先生は、「歴史的源流としてのホスピスとは」と題して、歴史と思想の文献的考察、ホスピスの成り立ちと考え方や歴史的・地理的な拡がりを仏教伝来の道を引用しながらホスピス伝来の道を紹介された。そしてホスピス緩和ケアの思想は、その地域の思想や歴史と結びつくことが大切と話された。また、日本の緩和ケアは変化しすぎてしまったのではないか?思想に矛盾があり混乱してしまっているのではないか?発展と混乱は紙一重だと案じられた。
 会場からホスピスケアと緩和ケアの違いについての質問があったが、演者間でも違いがあり、ほぼ同義語として使用されていたり、似て非なるものと捉えていたり、ケース・バイ・ケースで対象者に合わせて使い分けされたりしておられた。また、ホスピス緩和ケアとホスピス・緩和ケア、ホスピスとホスピスケアでもニュアンスが違うのではないかとの意見や緩和ケアは拡がりをみせた分、中身が薄まったのではないかとの意見もあった。本大会の中ではやや異色なワークショップであったが、予想をはるかに上回る参加で、有意義な内容であった。

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