Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.61
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2013  61
シンポジウム4
災害と緩和ケア
〜東日本大震災から学ぶ〜
座長・報告  君津中央病院 放射線治療科  清水わか子
座長・演者  東京大学医学部附属病院 放射線科、緩和ケア診療部  中川 恵一
 東日本大震災から3度目の夏を迎える今、被災地以外では既に震災が「過去のこと」になりつつあるような印象を否めない。しかし、現実には復興の道のりも遠く、また震災で明らかになった諸問題も多くが未解決のままである。このシンポジウムでは、実際に被災した立場や震災直後の支援活動に 関わった立場、さらにその後の支援活動を行っている立場など複数の視点からの基調講演2題と口演発表3題を通じて、震災発生直後および現在の問題点や「今、我々に求められること」についての討論を行った。
 東京大学の中川先生の基調講演は、原発事故という他の被災地とは異なる要因がある福島の厳しい現実を、生々しく衝撃的な形で提示するものであった。また、高橋参議院議員の基調講演では、震災直後、政治・行政の現場でどのような問題があり、それに対してどのように対応されたかについて具 体的に情報が提供された。
 続いて、DMAT・JMAT 活動で被災地に赴いた岩田先生からは、救命救急とは少し違った様相を示した実情についての報告があった。特に、オピオイドの調達や被災地への情報の伝達の難しさは、今後、解決を要する問題であるという印象を受けた。
 被災地を代表する形になった大船渡病院の村上先生は、ご自身の体験を率直に語り、「未だ、決して何も終わっていない」という事実を会場に伝えられた。語ることの精神的負担には計り知れないものがあったが、やはり当事者の視点からの語りから会場に伝わるものは大きかった。「当時のことを 、キチンと整理できていない」という村上先生の言葉には、「あの時」についての検証作業は、これから本格的に行わなくてはならず、それには被災していない我々が関わっていくべきであると痛感させられた。
 そして、現在も「お医者さんのお茶っこ」で被災者支援活動を続けられている儀賀先生は、被災者の方々の現状について、暖かいまなざしを持った報告 があった。
 限られた時間の中で、十分に討論をしたとはいえないが、「東日本大震災から学ぶ」ということは、過去の経験としてではなく、現在進行形の現実を「学び続ける」ことであると認識できたことは一つの収穫であった。
 重いテーマではあったが、シンポジウムが終わるころには会場全体が何か暖かい雰囲気に包まれていた。「今の我々に何よりも求められるのは、『忘れないこと』」と皆の心に届いた90 分であったなら幸いである。

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