Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.60
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2013  60
Journal Club
高度催吐性リスク化学療法の突出性悪心・嘔吐治療における
オランザピンとメトクロプラミドの二重盲検無作為化比較試験
手稲渓仁会病院 薬剤部  平手 大輔
Navari RM, Nagy CK, Gray SE.The use ofolanzapine versus metoclopramide for thetreatment of breakthrough chemotherapy-inducednausea and vomiting in patients receiving highlyemetogenic chemotherapy.Support Care Cancer.
2013 Jun;21(6):1655-63.

【目的】
 高度催吐性リスク化学療法誘発性の悪心・嘔吐予防としては、アプレピタント、5-HT3受容体拮抗薬、デキサメタゾン (以下、DEX)を併用する3剤併用療法が標準となっているが、制吐剤を予防投与していたにも関わらず発現した突出性悪心・嘔吐に対し推奨される薬剤はない。オランザピン (以下、OLN)は化学療法に関連する突出性悪心・嘔吐のレスキューとしても有効な可能性はあるものの、ガイドラインでは予防投与の項に記載があるのみである。本研究では突出性悪心・嘔吐に対するOLNの有効性を検証した。
【方法】
 化学療法治療歴のない高度催吐性リスク化学療法を受けるがん患者(シスプラチン≧70mg/uまたはドキソルビシン≧50mg/u+シクロホスファミド≧600mg/u)を対象としたメトクロプラミド(以下、METO)とOLNの治療効果を比較検討する第V相二重盲検無作為化比較試験である。予防的制吐療法は化学療法開始前にDEX12mg、パロノセトロン0.25mg、ホスアプレピタント150mg、day2-4にDEX4mgを1日2回内服とした。化学療法終了後、悪心・嘔吐が出現した時点でOLN10mg1日1回とプラセボ1日3回を内服する群 (OLN群)もしくはMETO10mg1日3回とプラセボ1日1回を3日間内服する群(METO群)に無作為に割り付けた。モニタリング期間はOLNもしくはMETO内服後72時間とした。主要評価項目はモニタリング期間中に嘔吐を認めなかった患者数、副次評価項目はM.D.Anderson Sympton Invetoryで嘔気を認めなかった患者数(scale0-10で0)とし、両群の有意差検定はANOVAにより行なっている。
【結果】
 276名の患者(年齢中央値62歳、年齢幅38-79歳、女性43%、ECOG PS0,1)が登録され、112名に突出性悪心・嘔吐が出現した。うち、108名について解析が可能であった。72時間のモニタリング期間中、OLN群39/56名(70%)、METO群16/52名(31%)に嘔吐が認められなかった (p<0.01)。同様にOLN群38/56名(68%)、METO群12/52名(23%)に嘔気が認められなかった(p<0.01)。試験を通じてGrade3/4の毒性は認められなかった。
【結論】
 高度催吐性の化学療法を受ける患者に突出性の悪心・嘔吐が起こった場合、OLNはMETOよりも統計学的有意に症状をコントロールすることが出来る。
【コメント】
 国内外で制吐療法のガイドラインが制定され予防的投与法は確立されてきたが、突出性悪心・嘔吐に対しては治療法が確立しておらず、推奨されている薬剤もない。日常臨床では5-HT3受容体拮抗薬やD2受容体拮抗薬などが経験的に使用されているものの、期待する効果が得られないことも多い。本研究では、突出性悪心・嘔吐に対しOLNは優れた有効性を示しており、他剤無効例では血糖測定を行った上で早期のOLNによるレスキューを考慮しても良いかもしれない。なお、わが国では悪心・嘔吐に対し保険適応外使用となる点、OLN投与量の検証が不十分な点には注意が必要である。

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