Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.60
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2013  60
Journal Club
胸腔留置カテーテルとタルクによる胸膜癒着術の悪性胸水に伴う
呼吸困難緩和に対する効果の比較
手稲渓仁会病院 総合内科・緩和ケアチーム  山口 崇
Davies HE, Mishra EK, Kahan BC, Wrightson JM, Stanton AE, Guhan A, Davies CW, Grayez J, Harrison R, Prasad A, Crosthwaite N, Lee YC, Davies RJ, Miller RF, Rahman NM.Effect of an indwelling pleural catheter vs chest tube and talc pleurodesis for relieving dyspnea in patients with malignant pleural eff usion: the TIME2 randomized controlled trial.JAMA.2012 Jun 13;307(22):2383-9.

【目的】
 悪性胸水に対する一次治療として胸腔留置カテーテルとタルク懸濁液による胸膜癒着術の呼吸困難改善効果を比較する。
【方法】
 2007年4月〜11年2月の間に英国の7つの施設で参加募集されたオープンラベルの無作為化比較試験である。適格基準は成人の有症状性悪性胸水と診断され胸膜癒着術が適応と考えられたもので、除外基準は18歳未満、予測予後3カ月未満、乳び胸水、患側に葉切除または肺全摘を行われた既往がある、胸膜癒着術の既往がある、胸腔内感染、白血球減少状態、2型呼吸不全、妊婦・授乳婦、不可逆的な出血傾向、不可逆的な視覚異常、とした。参加者はタルク群(胸腔ドレーン+タルク懸濁液による胸膜癒着術)とカテーテル群(胸腔留置カテーテルで胸水抜水を繰り返す)に振り分けられた。参加者は12ヶ月後までフォローされた。呼吸困難・胸痛はVAS(0-100mm)で、QOLはEORTC-QLQ30で評価された。主要評価項目は最初の42日間の平均呼吸困難強度(VAS)とした。
【結果】
 106名(タルク群:54名、カテーテル群:52名)が試験に参加した。平均年齢(67歳vs67歳)、性別(男性割合44%vs43%)には差がなかった。原発巣は肺癌がタルク群で多く(16/54名vs9/52名)、乳癌がカテーテル群で多かった(11/54名vs16/54名)。試験開始時の呼吸困難VASの平均は55mmvs62mmとタルク群の方が低かった。最初の42日間における呼吸困難VASの平均値はタルク群24.4mm(95%CI: 19.4-29.4)、カテーテル群24.7mm(19.3-30.1) で有意な差はなかった(差0.16mm (-6.82-7.15; P=.96))。開始前と比較して呼吸困難VASの改善の平均値はタルク群30.2mm(22.0-38.4)、カテーテル群 37.0mm (29.2-44.8)であった。副次評価項目としては、6ヶ月目の呼吸困難強度(タルク群>カテーテル群)、入院期間(タルク群>カテーテル群)、有害事象発生頻度(カテーテル群>タルク群)に有意差がみられたが、それ以外(胸痛、QOLなど)は差がなかった。
【結論】
 悪性胸水患者において、胸腔留置カテーテルとタルクによる胸膜癒着術には有意な呼吸困難改善効果の差は見られなかった。
【コメント】
 本研究はがん患者の重大な合併症である悪性胸水の症状緩和治療に関する重要な比較研究である。本研究の結果は、あくまでも胸膜癒着術が胸腔留置カテーテルを上回る有益性が示せなかったのみであり、胸腔留置カテーテルがより優れているという結果ではない。副次評価項目でも、胸腔留置カテーテルは入院期間が短い一方で有害事象発生頻度が多いなど、それぞれの長所短所があることが今回の結果からはうかがわせる。したがって、患者の状態や予後、希望などを踏まえながら治療法を選択していくのがよいと考えられる。

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