Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.60
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2013  60
Current Insight
学会発表なんてたいして意味はありません
オンラインジャーナル(学会誌)編集委員会 委員長/
東北大学大学院 医学系研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野
宮下 光令
 タイトルはいささか過激だったかもしれないが、みなさんは研究に関して学会発表で満足してしまってはいないでしょうか。ちょうどこの原稿を書いている最中に2013年度学術大会の抄録集が届いたので、私も真っ先に抄録をみてこんな研究発表があるのかとワクワクしています。しかし、残念ながら当日すべての口演を聞きに行くことはできないし、時間内にすべてのポスターを見ることも実際には難しいと思います。あとで論文として発表されればぜひ拝見したいという演題が多くみられます。
 本学会の発表演題はここ数年で大きく質・量ともに向上したと思います。素晴らしい研究に仕上がっているものだけでなく、臨床的な問題に真っ向から取り組んだダイヤの原石のようなものも多いと思っています。本学会は学術大会での発表は1000題を超えていますが、残念なことに学術論文となって発表されているものは必ずしも多くないと思います。優れた研究が学会発表で終わってしまい埋もれており、大変残念なことと感じています。
 研究は一般的にピアレビューを受けた雑誌に掲載されてはじめて意味があるものになります。学会発表はたとえ優れた発表であってもそのとき限りで終わっしまい、臨床的、学術的にあまり貢献しないことも少なくありません。論文にならないとデータベースにも蓄積されず、その後、「・・・で困った」「・・を調べたい」というときに調べても詳細がわからず、参考にならないことが多いです。毎年同じような発表が繰り返されることもあり、これは学術的な進展がないだけでなく、臨床からの知見が患者さん・ご家族にすぐに届かないという点で、われわれの専門家集団としての怠慢でもあると思います。そういった意味で本稿のタイトルを「学会発表なんてたいした意味はない」としました。
 私は教育・研究者になったときに、研究成果はすべて学術論文として発表するように指導されました。それがデータを取らせていただいた患者さん・ご家族に対する最低限の礼儀であり、学術論文にならない研究をすることは倫理的に間違っていると教えられました。研究者は学会発表の数が論文の数を超えないようにと教育されることもあります。私がこれを完全に守って来たとはいえませんが、残念ながら失敗してしまい発表する価値がなくなってしまった場合やプレリミナリーな結果で、今後発展させて確かな結果が出てから学術論文にするというケース以外はすべての研究が学術論文にされるべきだと思って取り組んでいます。もちろんプレリミナリーな研究をしたならできるだけ確かな結果が出るまで研究を続けるべきだと思っています。
 この文章は私的な意見を述べたものですが、このような背景もあり、本学会のオンラインジャーナル(学会誌)編集委員会では学術大会において発表された演題のうち論文として公表された場合にわが国の緩和医療に貢献が期待されると予想されるものに対して学会誌への投稿を提案する通知をすることにしました。詳細は本号の委員会報告をご覧下さい。通知が行った方はぜひ、残念ながら編集委員がその研究の意義に気付かず通知が行かなかった方も、ぜひ学会誌や国内外の学術雑誌への投稿をご検討いただければと思っています。

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