Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.60
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2013  60
口演38
手術療法1
座長・報告  富山赤十字病院 呼吸器外科  小林 孝一郎
 手術療法をテーマとして5題の発表が行われた。
 関西医科大学滝井病院の吉田良先生からは、消化器症状緩和手術の取り組みが示された。人工肛門造設術やバイパス手術により経口摂取が可能となったりPSが改善したりして、退院や在宅移行例が半数を超えた一方で、30日以内の死亡例もあり、ガイドラインに基づいて厳密に適応を判断する必要があるとされた。
 洲本伊月病院の橋本芳正先生からは、乳癌の癌性腹膜炎に対し腹腔静脈シャント術を行い長期生存中の1例報告がなされた。これまでに多数の症例に行ったが、明らかな転移の促進は認めず、1週間以上の予後が期待される場合には有効な治療であると結んだ。シャント閉塞に対する質問があり、ポンプ部で切断しシングルバルブタイプに替える対処法が示された。
 田岡病院の三木仁司先生からは、進行再発乳癌3症例に対する緩和的手術療法として、消化管バイパス術や大腿骨転移部骨折の髄内釘による整復固定術、ホルモン療法後の両側卵巣摘出術によるQOL改善の意義が示された。両側卵巣提出術の適応について議論がなされたが、意見の一致を見なかった。
 南風病院の益滿幸一郎先生からは、胃空腸バイパスの効果と適応について発表があり、上部消化管閉塞で予後見込みが3ヶ月以上を適応としたところ、平均生存期間は約3ヶ月だったことが示された。
 加古川医療センターの相原英夫先生からは、脳神経外科的治療の意義について発表があり、3ヶ月以上の予後が見込めれば、放射線治療や抗がん剤髄腔内投与、開頭術によって、生命・機能予後に関して有用とは言えないが、意識の改善や歩行、嚥下機能の改善などQOLの維持・向上に繋がるケースもあることが示された。固形がんに対する抗がん剤の髄腔内投与のエビデンスについて質問があったが、明確なエビデンスはないと言うことだった。
 全体を通して、症状緩和のための手術療法によってQOL改善を目指す取り組みが積極的に行われていた。しかしながら、恩恵を受けなかった症例も少なくなく、その適応については個々の患者ごとにメリット・デメリットを勘案し、患者の希望や予後を考慮して、チームで検討することの重要性を再認識した。

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