Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.60
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2013  60
関連企画1
構造構成医療研究会 第3回討論会
座長・報告・演者  洞爺温泉病院 緩和ケア病棟  岡本 拓也
 感謝なことに、小さな部屋には入り切らない大勢の人が集まってくれた。話が中途半端で消化不良になってはいけないので、ご講演は阿部泰之氏と京極真氏だけにして、私は司会に回った。25分程あった質疑応答の時間は全く足りなかったので、結果的にそれで正解だったろう。
 阿部氏は慢性疼痛について、京極氏は信念対立とその解明アプローチについて、それぞれ自らの臨床経験に照らし合わせつつ、構造構成主義のツールを駆使して、自ら考究した結果を発表してくれた。
 阿部氏は、痛みが「志向相関的に構成され続ける構造である」ことをさまざまな例を示しながら説明した。痛みに関与する神経伝導路に絡めた生物学的な説明が支配的だけれども、それも1つの志向性に過ぎず、痛みは様々な志向性によって様々に構成され得るものであり、阿部氏に言わせれば「スライムのように」絶えず変化し続けている構造である。
 ただ、このテーマについて十分に論じ切るためには、私が『わかりやすい構造構成理論』(青海社)の中で展開したような言語論的アプローチも加える必要もあるように感じた。痛みという言葉(概念)で捉えるのが妥当かもしれない経験も、やはり言葉によって捉えられ表現されるからである。
 京極氏は、現在、厚労省科研費の助成をうけ、自らのライフワークとも言える信念対立解明アプローチが臨床現場で実践的に役立つものとなるように、調査・実践を通して改良と工夫を重ねているようだ。提示される喩えが秀逸で、参加者は爆笑させられながら深い原理や概念の理解へと導かれて行った。
 基本的に、信念対立は、相手や自分が置かれている「状況」と相手や自分が抱いている「関心(目的、意図)」がわからないことから生じる。この「状況」と「関心」を、お互いに「自覚」し「共有」することによって、信念対立の解消が期待される。この「自覚」と「共有」をいかにして実現するかのスキルを、京極氏は開発し(ようとし)ているわけだ。
 予定の2時間をたっぷり使っても時間の不足を誰もが感じた。もっと議論したくなるような雰囲気があり、参加者は知的興味を掻き立てられた。本質学であり、臨床的役立ちへの志向性を持つ構造構成医療学をさらに発展させるべく、これからも緩和医療学会のご支援・ご協力をお願いしたい。

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