Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.60
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2013  60
ワークショップ8
患者・家族からみた緩和ケア
座長・報告  岐阜中央病院 緩和ケア科  西村 幸祐
座長  がん・感染症センター都立駒込病院 緩和ケア科  栗原 幸江
 緩和ケアの視点は、終始、患者・家族の全人的QOLの向上である。この視点から、良き援助者として如何にケアを提供するかという最も根源的なところに立ち返り、@医療者とのギャップの認識とそれらを埋めていく現在の試みを分かち合うこと、A目指す緩和ケアに向けての具体的な一歩を見つけて行くこと、をポイントとしてワークショップが展開された。患者・家族からの声として、前川育氏(NPO法人周南いのちを考える会)、MSWからの視点で田村里子氏(東札幌病院)、在宅看護の視点から宇野さつき氏(新国内科医院)、緩和ケア医として石原辰彦氏(岡山済生会総合病院)が登壇した。前川氏からは、医療者から突き付けられる「緩和ケア」施設(セッティング)への強制力を持った紹介についての患者家族の思いについて語られ、その思いに耳を傾ける態度をさらに涵養してほしいとメッセージされた。田村氏からは患者家族・医療者をめぐる詳細な関係性について示された後、顔の見える関係をしっかり築いていくことが重要であり、ずれやギャップを埋めて行くより添いについて語られた。宇野氏からは、無念と不安の中で終末期在宅生活へはいらざるを得なくなった患者家族への支援の在り方について具体例が紹介された。患者の思いを真摯に聞かせていただくことで、在宅医療が幸せなものになる経過が示された。石原氏は、緩和ケア病棟への紹介の在り方の困難・問題点について歴史的経緯を含めて紹介された。まだまだ緩和ケアに対する理解の不足と誤解がある状況の一方、多様な立場の患者・家族が増加することが予想され、今まで以上に“寄り添いというコミュニケーション”を深めていく重要性が示された。
 緩和ケアの在り方の根本が問われる場面に3氏は関わっており、それぞれの立場での医療者と患者・家族のギャップについて指摘され、その上で深い経験に基づいた工夫が提示された。共通して言えることはやはり、患者家族の思いに耳を澄まして受け止め、熟達したコミュニケーションを基にして信頼関係を構築し、安心を保証することが不可欠であるということであった。今後のあり方として、それぞれのセッティングで思いをしっかり受け止める感受性のアンテナを今まで以上に深く広く張り巡らし、患者・家族の「感情」に焦点を当てるという態度が医療者に必須であることが確認された。
 本ワークショップでは質問用紙を会場に配布し、アクティブな参加をもくろんだ。多くのコメント・質問が寄せられ、本報告に反映することになった(が、紙面の関係でQ&Aが本稿で示されずお詫び申し上げます)。発表者にはすべての質問・コメントが提供されたことを報告する。いただいたコメントの多くに共通したのは「いかに信頼を得るコミュニケーションを構築するか」であり、改めて参加者・発表者にそれぞれに宿題が課せられたということになった。集った参加者はみな、「患者・家族から見た」という視点は援助者にとってごく自然にそして常に熟慮する視点である、ということを再確認したと思われた。

Close