Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.60
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2013  60
パネルディスカッション7
政治と緩和医療
〜医療政策に期待すること〜
座長・報告  岡山大学病院 緩和支持医療科  松岡 順治
座長・演者  公立学校共済組合 近畿中央病院  飯島 正平
 国民皆保健制度のもとで医療を行なうわが国において、緩和医療のあり方も保険制度とその方向性を定める医療政策に大きな影響を受ける。緩和医療はがん対策基本法とがん対策推進基本計画による政策誘導によって従来と比べると格段に拡大してきた。今回大会長の英断により、わが国における緩和医療の現状と今後のあるべき姿を論議し、政策にいかに反映していくべきかを現職の国会議員である後藤田正純氏とともに論議する機会を得た。後藤田氏は医師の家系に生まれ医療を身近に見てこられた経験から、現状の政治あるいは診療報酬により誘導される医療はいわゆるnoisy minorityによって合意形成される傾向があり、理想的な医療を実現するためには、毎日患者さん家族のために緩和医療を行っている有為のsilent majorityの意見を反映させるべきであると説かれた。そのために多くの医療者が政治に参加してほしいとの希望を示された。飯島氏は超高齢社会を迎える日本において、今後は専門家を集めるチーム医療の充実が益々重要となり、そのためには医療者と国民の教育と啓発、さらに報酬の裏付けが必要となるとした。全国で大規模にサービス付き高齢者住宅を展開するメッセージの橋本俊明氏は、在宅を推進するのは医療費の問題ではなく、自己決定権を発揮する場所としての住居が必要であるからであり、そのためにも早期の退院を推進すべきであるとした。そのための政策としては入院費の逓減、クリニカルパス、外来の充実、在宅医のグループ化、訪問看護の充実などを挙げた。カナダでの在宅緩和医療の成功モデルとして有名なエドモントンの樽見葉子氏は、カナダでもがんによる死亡場所は45%が急性期病院であること、在宅死亡は20%程度から増えていないという現状を示された。医療のシステムを変えるだけでは在宅緩和は成功せず、社会の構造、収入、国民の教育などのソーシャルキャピタルを変えなければ成功しないと説かれた。エドモントンでは在宅死を増やすのではなく、いかに長く在宅で過ごすことができたかを在宅緩和成功の指標としている。患者の診療情報を共有するシステムについてはエドモントンではすべての患者診療記録が閲覧できるようになっており、日本でもそのようなシステムを望む声が多かった。カナダでは医療者が医療倫理と経済効率を遵守することが義務づけられているが、日本にはそのようなシステムがないことも指摘された。教育の重要性を説いたパネリストが多かったが、会場を埋め尽くした医療者の中で緩和医療の講義を医学部で受けた方は1人にすぎず、永続的な緩和医療学講座の設置が望まれる。会場からは在宅を支援する医療者の日常の苦労、あるいは医師会の地道な活動についての発言があり、患者家族のために汗を流している医療者に対しての適切な評価を望む声がきかれた。このパネルでの医療者の声が為政者に届き政策に反映されることを期待している。

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