Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.60
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2013  60
シンポジウム9
腫瘍学における緩和ケア
座長・報告  弘前大学大学院医学研究科 腫瘍内科学講座  佐藤  温
座長  兵庫県立大学看護学部  内布 敦子
 会議センターメインホールの大会場に多くの方々が参加され、また各発表に対しては予想以上の熱のこもった質疑応答が繰り返され盛況であった。「腫瘍学における緩和ケア」というタイトルは曖昧だったかもしれない。捉え方が千差万別となってしまった感が残る。本来、腫瘍学という学問は臨床現場では「がん医療」を意味し、緩和ケアはそこに含まれるものと理解していた。しかし今回の発表の多くは、腫瘍学を、手術や抗がん薬物治療といった、積極的な抗がん治療と捉え、それに対する緩和ケアを対比して論じていた。名古屋大学産婦人科 梶山広明先生は、積極的抗がん治療の終了後の婦人科癌患者において在宅/ 緩和ケア施設での診療が予後を延長する可能性について報告した。バイアスがかかっているため、結論はでないが、今後研究分野としては興味深いものである。大分県立病院呼吸器外科 赤嶺晋治先生は副作用が注目されたEGFR-TKI使用についてのアンケート調査を報告した。商品名の告知なしでの結果であり、報道の影響は外されていたものの、医師らと患者の思いの違いを浮き彫りにしていた。市立千歳市民病院外科 福島剛先生らは、積極的抗がん治療から緩和ケアへの移行のタイミングにおいて客観的評価方法の有用性を報告した。大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター緩和ケア科の津森鉄平先生らはCVポートが緩和ケア移行においても有用であると報告した。これらの発表に共通している緩和ケアとは、診断時から始まるべきケアの緩和ケアではなく、終末期医療としての従来の緩和ケアを意味していた。この領域における言葉が豊富ではないことが、医療者間の認識にギャップを作ってしまう可能性があることを心配する。救世軍清瀬病院ホスピス緩和ケア科 赤司雅子先生からは、分子標的治療の登場により、ホスピスでの診療期間が短くなったことから、ホスピスの役割も再考していく必要があると報告した。東札幌病院血液腫瘍科平山泰生先生の発表は大変インパクトのある今後の方向性を示す内容であった。緩和ケアの必要性をoncologistがゲートキーパーとして判断するが如く、がん薬物療法の適応についても緩和ケア医にゲートキーパーとしての判断が求められることになるかもしれない。やはり、包括的医療における方針決定が的確におこなわれるべきシステムが各医療施設に求められている。多くの問題が、各職種それぞれのプロフェッショナリズム追求で解決できることを願う。

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