Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.60
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2013  60
シンポジウム2
せん妄のケア、マネジメントの進歩と問題点
座長・報告  名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野  明智 龍男
座長  国立がん研究センター 東病院緩和医療科  木下 寛也
 第18回日本緩和医療学会におきまして、国立がん研究センター東病院緩和ケア科の木下寛也先生と「せん妄のケア、マネジメントの進歩と問題点」と題されたシンポジウムの座長を務めさせていただきました。本紙面をお借りして、シンポジウムに参加できなかった皆様のためにも当日の内容をご紹介させていただきたいと思います。
 本シンポジウムではサイコオンコロジーおよび緩和医療の領域で実践を重ねておられる4人の先生方にせん妄のケアやマネジメントに関しての先駆的な取り組みについてご紹介いただきました。打ち合せの際に抄録と発表の順番を変更することになり、まず最初に東京女子医科大学の山内典子先生に、御自身が精神看護専門看護師として取り組んでおられる看護師に対するせん妄に関しての教育やコンサルテーション活動に関してご発表いただきました。中でも病院に勤務する看護師を対象に、看護師本来の役割を念頭においたせん妄の早期発見および促進因子への看護ケアを適切に提供するためのせん妄ケア教育プログラムを紹介され、その効果とともに早期からの対応の促進には更なる取り組みが必要であるなどの課題もご紹介下さいました。せん妄の患者さんの視点にたったよりよいケアの在り方として、実際の事例などを紹介され、その取り組みの重要性に多くの聴衆の方がうなづいておられました。二人目は国立がん研究センター東病院の小川朝生先生が精神腫瘍医として、病院全体の多職種によるせん妄ケアを改善する取り組みについてご発表されました。介入の結果についてはこれからとのことでしたが、現場の看護師さんや薬剤師さんを対象にしたフォーカスグループで問題点を明らかにして、それらを盛り込んだ多職種介入プログラムを開発されたとのご発表でした。患者さんの言動の観察のポイントや薬剤の整理など臨床的には大変重要な内容が盛り込まれたプログラム内容でした。三人目は聖隷三方原病院の森田達也先生が緩和ケア医の立場から、終末期せん妄の御家族に対するケアの在り方に関しての御自身の研究を紹介されました。大変興味深かったのは家族の立場からは医療者が困らないような「うとうとしてしまって会話が十分できない」といった症状も苦痛に感じていること、本来の緩和医療としての介入はこれら家族の視点も忘れずに行わないといけない、というメッセージでした。これらを受けまして、最後の演者として、市立札幌病院の上村恵一先生が精神科医の立場から、終末期の活動低下型せん妄に対しての薬物療法の可能性としてラメルテオンの有用性に関して後方視的な臨床研究の結果をご紹介されました。患者さんのコミュニケーション能力の維持を主要評価項目として行われた薬剤に関する知見は非常にまれなものであり、今後の前方視的な研究がぜひ待たれるところです。4名の演者の先生からのご発表後、フロからは、看護師および医師に対するせん妄の啓もうに関してのより実際的な方法、低活動型せん妄に対してのラメルテオンの投与量や方法の詳細などについて活発な質問があり、聴衆をまじえて多彩な議論がなされました。フロアは立ち見の方であふれる盛況ぶりでありせん妄に関しての関心の高さがうかがわれました。
 今年9月20-21日には大阪で第26回日本サイコオンコロジー学会総会(http://jpos26.umin.jp/)が開催されます。日本サイコオンコロジー学会でもせん妄をはじめとしたがん患者の精神症状のマネジメントの話題がたくさん取り上げられますので、がんの患者さんの精神症状マネジメントに関してもっと深く学んでみたいという方はぜひ大阪まで足をお運び下さい。

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