Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.60
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2013  60
教育講演1
魂の原郷
〜伊勢神宮のこころ〜
座長・報告  市立貝塚病院  小川 道雄
 人の体を「から」とみなし、その殻の中に「霊(魂)たま」が収まっているという千数百年昔からのわが国の信仰は、今もそのまま残っている。
 伊勢神宮は天照大神を祭る内宮、豊受大神を祭る外宮を頂点に、125のお宮、お社からなることが示され、そこで行われている行事が紹介された。
 外宮では「日別朝夕大御饌祭」が毎朝夕行われ、食事が供えられる。また内宮・外宮二つの正宮の正殿、14の別宮の社殿は、持統天皇4年(690年)から20年に一度行われている「神宮式年遷宮」で造りかえられ、神座が遷される。全く同じ御殿を隣り合った場所に新造し、装束、神宝も全く同じものが新しく造られる。このときの「遷御の儀」の様子を、絵巻や赤外線写真(夜間に行われるため)でみることができた。
 「食」として日に2度同じ食事(内容は季節により少し異なる)が供えられ、「住」、「衣」は20年に1度、いにしえに造られたものがそのままの型で造りかえられる。
 われわれの細胞は、日々新しく、しかも同じものとして生まれかわっている。また個人は、ある時間をおいて子、そして孫に入れかわる。「式年遷宮」の仕来りや様子をききながら、「式年遷宮」が弥生建築や弥生文化の保存という意義とは別に、生命現象そのものを象徴しているのではないか、という印象をうけた。
 緩和医療を担当していると、はじめ患者さんは、年令、性、職業、教育、家庭状況などの相違によって、一人ひとりが皆違うと感じる。しかししばらく交流をつづけていると、その背後に共通するところがあることに気付く。それは神話の時代から綿々と伝えられる歴史が、日本人の心に刷り込まれていることを示しており、日本人の魂の原点は、伊勢神宮によって受けつがれている、と感じた。
 東口志学術大会会長が本講演を企画された狙いは、この点にあったのではないかと推察した。

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