Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.60
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2013  60
巻頭言
緩和ケアでの出会い
〜患者が大切にしているものをrespect する〜
関西福祉科学大学 臨床心理学科  柏木 雄次郎
 これまで勤務しました関西労災病院や大阪府立成人病センターなどの緩和ケアの臨床現場で、患者・家族・医療者との様々な出会いと別れを経験しました。その中で、ひときわ印象深く、心の奥底まで沁み入る大事な言葉を私に与えて下さった方が居られます。その方は、高槻赤十字病院(大阪)の前・緩和ケア科部長の岡田圭司先生です。ご自身もがん患者として種々の思いを抱えながらも、最後まで患者・家族、またご自身のご家族、友人、知人への優しい思いを大切にして、これらの人々に献身し尽くして、2010年6月25日に永眠されました。
 岡田先生には沢山のことを教えていただきましたが、その中でも「患者さんが苦しい時や辛い時に本当に救いになるのは、目の前にいる人(家族・医療者など)が患者自身のことや患者が大切にしているものをrespect(尊重)してくれていると感じられることです。」という言葉が、緩和ケアの原点として私の心に今も深く刻まれています。これは岡田先生が緩和ケア医としてよりも、一人のがん患者として伝えたかった言葉であったと思います。「患者が大切にしているもの」つまり「患者にとって生き甲斐といえるもの」を患者の目線で尊重されてこそ、生きる力が湧いてきて、医療者の持っている緩和ケアの知識や技術が活きてくるということでした。
 また、「患者・家族に対して、あくまでも謙虚な姿勢が必要です。」ということも強調されていました。ともすれば、「患者のために」と言いつつも医療者の意向が優先してしまうことがあります。患者・家族の意向・希望に沿うためには、医療者として何ができるかを謙虚に考えて、「してあげるではなくて、させていただくのです。」とも仰っておられました。
 これらの言葉は、「緩和ケア」だけでなく医療一般においても、最も基本になる言葉ではないかと思います。岡田先生は大阪府がん診療連携協議会・緩和ケア部会やPEACE 研修会での多くの医療者との出会いを大切し、ここで知り合った友人たちを「大阪ぴーすの仲間」と呼んで宝物のように思われて、亡くなられる直前まで緩和ケアに寄せる思いを「大阪ぴーすの仲間」に少しでも伝えてほしいと希望されていました。此度、大阪のみならず広く全国の緩和ケアに携わる方々に岡田先生の思いをお伝えできる機会を与えていただきましたことを心より深く感謝申し上げます。

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