Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.59
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2013  59
学会印象記
AAHPM & HPNA 年次集会に参加して
大阪大学大学院医学系研究科 緩和医療学寄附講座 助教
前田 一石
 2013年3月13〜16日にニューオーリンズで開催された米国ホスピス緩和医療学会・ホスピス緩和看護協会(AAHPM&HPNA)の年次大会に参加しました。開催地はジャズで有名な米国南部の都市で、会場でも朝夕にジャズやケイジャン音楽が演奏され、彩りにあふれた学会でした。参加者は約2500名で、アメリカ国内からの医師・看護師・ソーシャルワーカーなどの参加が多いようでした。
 初日はプレカンファレンスのAdvanced Spiritual Care in Palliative Medicine のセッションに参加しました。スピリチュアルペインをどのように評価するかというレクチャーの後に、模擬患者を用いたチームカンファレンスの演習がありました。医師、看護師、ソーシャルワーカー、チャプレン、そして患者が同じテーブルを囲んでディスカッションすることで、患者の直面する苦しみを多面的に評価し対策を考えることが出来ました。30〜45分という比較的短い時間で問題点が浮き彫りにされる場面を体験し、チームアプローチの有用性を再認識しました。医師主導になりがちな日本の臨床現場と比べて、医師にかかる負担も軽減されている様に感じました。
 二日目には8年前にニューオーリンズを襲ったハリケーン・カトリーナの経験を踏まえて、災害への備えに関するご講演がありました。電気・水道などのインフラが使えない状況では緩和ケアを含む医療の有り様が全く変わってしまう様が示され、災害時の様々な取り組みに加え、平時の備えの重要性が示されました。特に、トリアージの必要性・プロセスの妥当性について社会で合意を形成し、現場の医療者のみがその責任を引き受けないことが重要だと強調されていたことが印象に残りました。
 一年間の重要論文のレビューを行うセッションも幾つかあり、興味深いテーマを簡潔にまとめられるので勉強になりました。研究で得られた知見に基づいて難しい症例のディスカッションを行うセッションもあり、若い演者がフロアと活発にディスカッションしている姿には刺激を受けるとともに、ナラティブに傾倒しがちな緩和ケア領域でサイエンスを重視する姿勢に感銘を受けました。
 本学会に参加して、チームアプローチ、重荷を分かち合うこと、緩和ケア領域でもサイエンスを実践することの大切さを再確認しました。刺激の多い学会でしたが、日本からの参加者が非常に少ないのが残念でした。個人的には論文レビューなどの医学英語はある程度分かるものの、スピリチュアルペインなど心理社会的な背景の理解を要する話題では、発表・ディスカッションについていけず残念なことが多かったです。次年度も参加して、現地で皆様とお会いできればと思います。

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