Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.59
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2013  59
学会印象記
第28回日本静脈経腸栄養学会
藤田保健衛生大学 七栗サナトリウム 薬剤課
二村 昭彦
 日本静脈経腸栄養学会(理事長:東口志教授)は、現在18,000名を超える会員を有する世界最大の栄養関連学会です。本学会の飛躍的な発展の理由には、NST(栄養サポートチーム)をはじめとする栄養関連医療チームの活躍と同時に、適切な栄養管理の実践を望む社会情勢の高まりが考えられます。このNSTの普及に伴って各施設で適切な栄養管理の必要性や有用性が認知されるようになり、これまで軽視されてきた終末期がん患者に対する代謝・栄養管理も大きく体系づけられようとしています。そして、第28回を迎える本学会の学術集会が2013年2月21日と22日の両日、石川県立音楽堂などで開催されました。「和」のテーマのもと、全国の栄養療法の重要性を知る医療人が一同に会して、熱いディスカッションが交わされました。本テーマは、医療現場において病を治すにとどまらず、心も癒す「和みの心」を忘れてはならないとの思いが込められており、参加者にとっては緩和医療を強く印象付けた大会になったものと思います。また、本学会は、多職種で構成される学会としては世界最大級のものであり、NSTを象徴するように、日本緩和医療学会に共通する「チーム医療」が軸となっていることも特徴としてあげられます。プログラムのなかで特に目を引いたのは、理事長の東口教授の呼びかけでアジアの国々の静脈経腸栄養学会の代表者を集めたジョイントセッションの開催でした。多くの職種や海外の専門家から多方面の意見や考え方を聴くことができ、非常に新鮮であり大変貴重な場になったと思います。将来、本学会と日本緩和医療学会、さらにはEuropean Association for Palliative Care(EAPC)などとの合同企画が両学会理事長のもとで実現されることが望まれます。緩和領域では、「緩和医療と栄養管理」が主題演題の筆頭にあがり本学会においてもその関心の高さがうかがえます。発表内容は、終末期がん患者の代謝動態を呼気ガス分析法により基礎代謝エネルギー量を実測することの有用性や鋭敏に反応する栄養アセスメント蛋白であるRapid turnover protein のうちトランスサイレチンが予後との間に高い相関があることが示されました。これまで臨床症状により主観的に判断が求められた終末期医療のなかでエネルギー代謝動態やbiomarker を指標としてモニタリングすることで、医学的にrefractry cachexia の診断・評価に応用され、患者のQOL 向上に寄与できるのではないかと期待されます。さらに、第三者機関日本栄養療法推進協議会(JCNT)の共催で開催される日本静脈経腸栄養学会と日本病態栄養学会の合同シンポジウムにおいても「緩和医療における栄養管理」がテーマに取り上げられ、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士の立場から、患者・家族の気持ちや価値観を考え合わせた栄養療法が紹介されました。今後益々、NSTと緩和ケアチームとの連携強化や幸せに逝く在宅医療体制の構築が重要であると実感するシンポジウムでした。悪液質、在宅、サルコペニア、リハビリテーション、栄養評価、教育、摂食・嚥下、人工栄養の適応、など本学会で取り上げられたテーマは、いずれも緩和医療においても深く共通するキーワードであります。このことからも栄養療法の実践こそが、精神(こころ)にも身体(からだ)にも優しい緩和医療の基盤であることは疑うべくもなく、そのことを強く再認識できた学会であったと思います。

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