Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.58
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2013  58
学会印象記
日本臨床外科学会総会
相模原中央病院 外科  戸倉 夏木
 2012年11月29日から12月1日まで第74回日本臨床外科学会総会が東京で開催されました。2年前のニューズレター50号で同学会の印象記を書かせていただいたので2度目の印象記となります。
 会長は杏林大学外科学教室の呉屋朝幸教授でした。今回は同一テーマの発表は同じ日に同じ会場でという計らいもあり、主題演題として取り上げられた「外科医と緩和医療」は3日目の朝8時から16時半まで、5つのセッション38演題と最後に岡山大 学の松岡順治教授、藤田保健衛生大学の東口志教授という第17、18回の日本緩和医療学会学術大会の会長が座長という豪華な布陣でのパネルディスカッション8演題が発表されました。
 今回の第一印象ですが、とにかく発表内容が大きく変わったことです。ほとんどの演者は、がん診療連携拠点病院や地域中核病院の緩和ケアチームでコアメンバーとして専従、専任医師として働いていました。がん対策基本法施行以来、緩和ケアのニーズが高まり、多くの外科医がその経験を生かして働いています。腹水対策のCART 療法やDenver shunt、消化管狭窄に対する最新のステント治療などの発表も興味深く聞きました。外科医の衣を脱ぎ捨て、緩和ケア医として終末期患者さんやご家族への対応の難しさ、院内活動におけるシステム構築の苦慮など、毎日の緩和ケア診療で苦労している内容も発表されていました。鹿児島の外科系学会でニューズレター編集委員長の中島信久先生と初めて言葉を交わしてから約10年、当時はまだモルヒネの使用経験が演題として取り上げられたような時代でしたが、外科医の中にも日々緩和ケアの概念が浸透していると実感しました。
 しかし一つだけ気になったことがあります。演者も会場の聴衆もキャリアを積んだベテラン医師が多かったことです。昨今流行の鏡視下手術のセッションに若手外科医は殺到します。外科医の本分は手術技量の習得にありますのでそれはいたし方のないことかもしれません。
 今後5年10年先を考えると、緩和ケア専門医の育成システムが充実していけば、彼らを中心に緩和ケアの中で外科医のスキルをどう生かすかという時代が訪れるのではないかと思いました。

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