Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.58
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2013  58
Journal Club
がん疼痛治療におけるケタミン皮下注のプラセボ対照無作為化比較試験
手稲渓仁会病院 総合内科・緩和ケアチーム  山口 崇

Hardy J,Quinn S,Fazekas B,Plummer J,Eckermann S,Agar M,Spruyt O,Rowett D,Currow DC.Randomized,double-blind,placebo-controlled study to assess the efficacy and toxicity of subcutaneous ketamine in the management of cancer pain.J Clin Oncol 2012; 30:3611-7.

【目的】
 オピオイド・標準的鎮痛補助薬で十分に鎮痛が得られないがん疼痛に対してケタミン皮下注の臨床的有用性を評価する。

【方法】
 オーストラリアの10施設における、18歳以上の患者を対象としたプラセボ対照2 重盲検無作為化比較試験である。治療抵抗性がん疼痛の定義は、十分量のオピオイド・鎮痛補助薬を使用してもBriefPain Inventory(BPI)平均の痛み≧ 3、とする。6カ月以内に痛みに対してケタミンが使用、2週間以内に疼痛部位へ放射線治療が行われる、治療期間中に痛みに影響する追加治療が行われる、ケタミン使用の禁忌となる合併症がある場合は除外とした。参加者はケタミン群・プラセボ(生食投与)群に無作為に割り付けられ、ケタミン投与量は100mg/日より開始し、5日間の期間にプロトコールに従い100,300,500mg/日の3段階のいずれかで維持投与量とされた。臨床的有意な鎮痛をBPIで2点以上低下し、1日4回以上の突出痛に対する薬剤使用がない状態と定義した。主要評価項目は、5日目終了時点での臨床的有意な鎮痛が得られているかである。

【結果】
 187人が参加し、最終的に185人(ケタミン93人、プラセボ92人)がIntention-to-treat (ITT) 解析の対象となった。両群の背景には有意な差は認めなかった。臨床的有意な鎮痛はプラセボ群27%、ケタミン群31%得られ、有意な差は認めなかった(p=0.55)。ケタミン投与によって得られる鎮痛のための(Number need to treat) NNTは25 (95%CI;4- ∞ ) であった。一方、ケタミン群の方が約2倍の有害事象の悪化が認められ、ケタミン使用による有害事象発症のNNH (Number need to harm) は6 (95%CI;4-13) であった。

【結論】
 十分な検出力がある無作為化比較試験であったが、結果からは進行がん患者の治療抵抗性疼痛に対してケタミン皮下注をオピオイド鎮痛薬に追加することは支持されない。

【コメント】
 本研究は、がん疼痛に対するケタミン追加の効果を検討した初めての無作為化比較試験である。ケタミンはオピオイド抵抗性の痛みに対して本邦でもしばしば使用されるが、今回の研究ではその有効性は示せなかった。本研究では、オピオイドおよび標準的な鎮痛補助薬を使用している患者を対象としているため、ケタミンの効果が小さい結果になった可能性がある。また、ケタミンの投与方法が標準化されていないため、本研究で使用された投与量・投与方法が適切であったかは結論が出ないと考えられる。しかしながら、プラセボに比較して有効性を示すことができなかったのみならず、NNTがNNHを大きく上回ったという結果から、進行がん患者に対してケタミンを使用する際には十分に有害事象に注意を払う必要があるということが結果から言えるため、安易なケタミンの使用は現時点ではつつしむべきであるということが本研究の結果からは言えるのではないかと考えられる。

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