Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.58
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2013  58
Journal Club
18歳以下の子供を持つがん患者の、心理社会的苦痛や親役割に関する
心配事や不安を測るための尺度の開発(アメリカ)
:Parenting Concerns Questionnaire(PCQ)
東北大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 緩和ケア看護学分野
清水 恵
Muriel AC,Moore CW,Baer L,Park ER,Kornblith AB,Pirl W,Prigerson H,Ing J,Rauch PK.Measuring psychosocial distress and parenting concerns among adults with cancer.Cancer 2012 Nov 15;118(22):5671-8.

【背景・目的】
 アメリカにおいて、がん患者のおよそ22%は、20歳〜55歳という社会的活動度が高い世代であり、彼らの多くは、18 歳以下の子供を持ち育てるという親としての役割を担っている。子育て中のがん患者はそうでないがん患者と比べて、不安や抑うつが多いと言われている。また、親ががんである子供は、内面的な問題をより多く抱えることも報告されており、18歳以下の子供を育てるがん患者は、親としての役割や子供に関連した心配事が多く存在する。より支援の必要な子育て中のがん患者を認識するために、子育て中のがん患者が、どの程度心理社会的苦痛や親としての役割についての心配事を抱えているかを評価する尺度Parenting Concerns Questionnaire(PCQ)を開発する。

【方法】  
 18歳以下の子供を持つがん患者16人のフォーカスグループにより、親としての役割に関する心配事についての38項目の質問票を作成した。その後、38項目について、18歳以下の子供を持つ外来がん患者173人への質問紙調査を実施し、因子分析により項目削除を行った。QOL 尺度としてFACT-G、抑うつ不安尺度としてHADS、全般的心的苦痛の尺度としてDistress Thermometerについても回答を得た。

【結果】
 因子分析の結果、PCQは最終的に3下位尺度15項目の尺度とした。下位尺度は、1)病気による子供への実質的影響(子どもと十分な時間が過ごせない、病気によって子供の生活習慣を変えなければいけない、など)、2)病気による子供への心理的影響(病気により子供が動揺している、子供に専門的心理的サポートが必要かもしれない、など)、3)親としての役割の協力体制に関する心配事(自分が死んだときもう片方の親は子供の心理的ニーズを満たせないだろう、自分が死んだとき子供を世話してくれる人がいない、など)となった。クロンバックα係数は3下位尺度で平均0.83であり、内的整合性は良好であった。FACT-G、HADS、Distress Thermometerとの相関も妥当であった。PCQ得点が高い(親としての役割に関する心配が大きい)ことと関連していたのは、女性、ひとり親、転移再発がん、治癒不能であることを自覚していること、併存疾患があること、最近精神的問題に対する治療をうけたことであった。

【結論】
 親としての役割に関する心配事の程度を測るための信頼性・妥当性のある尺度が開発された。親としての役割についての悩みを抱えたがん患者を支援する上で有用な尺度となる可能性が示唆された。

【コメント】
 がん患者の療養生活を支えるうえで、家族ケアの重要性が叫ばれているが、家族ケアの中心として、主介護者へのケアが中心となっており、どうしても子供に関してのケアという視点が欠けてしまうことも多い。本尺度は、親としてのがん患者と子供の関係に焦点を当てることにより、がん患者が親としての役割を遂行するための支援とともに子供への支援へとつなげられる可能性を秘めているといえる。

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