Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.58
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2013  58
Journal Club
患者評価による症状と医療者評価による
症状のいずれがより予後を予測するか
東北大学大学院 緩和ケア看護学分野  佐藤 一樹
Stone P,Gwilliam B,Keeley V,Todd C,Gittins M,Kelly L,Barclay S,Roberts C.Patients' reports or clinicians'assessments: which are better for prognosticating? BMJ Support Palliat Care 2012; 2(3):219-223.

【目的】
 症状を用いた予後予測モデルPiPS(The Prognosis in Palliative care Scale)の予測精度を患者評価による症状を用いた予後予測と医療者評価による症状を用いた予後予測で比較する。

【方法】
 英国の18の緩和ケアサービスに紹介された、さらなる対がん治療を受けない進行期がん患者1018名を対象とした。医療者は症状、ECOGPS、全般的健康度(7段階)からなる調査票を記入し、自己評価可能な患者は同様の項目を評価した。診療記録から患者背景や疾患、身体所見、検査値の情報を得た。予後予測モデルは「日の単位(14日未満)」「週の単位(8週未満)」「月の単位(2か月以上)」を予測し、医療者評価の症状を用いたモデルPiPS/OR(PiPS observer-rated models)、患者評価の症状を用いたモデルPiPS/PR (PiPS patient-rated models)、患者評価が欠測の場合は医療者評価を用いた合成モデルPiPS/CM(PiPS composite-scoring models) の3通りを採血データの有無別にロジスティック回帰分析により作成した。予後予測モデルの予測精度は、実際の予後との一致度κ係数を比較した。

【結果】
 症状の患者評価の得られた708ペアを分析対象とした。医療者評価と患者評価の一致度は、症状(食欲不振、呼吸困難感、口渇、嚥下障害、疼痛、倦怠感)でκ=0.26〜0.52、ECOG PSでκ=0.68、全般的健康でκ=0.34であった。予後予測モデルの予測精度は、PiPS/OR、PiPS/PR、PiPS/CM の順に、採血データのない場合では一致率57.3%、51.5%、56.8%、κ係数0.441、0.215、0.420であり、採血データのある場合では一致率57.3%、55.3%、57.8%、κ係数0.373、0.314、0.388 であった。採血データの有無に依らず、κ係数はPiPS/PRよりPiPS/OR の方が有意に高かった。

【結論】
 予後予測モデルの予測精度は、患者評価による症状より医療者評価による症状を用いた予後予測の方がより正確であった。終末期患者が症状を評価することは負担であり評価困難であるため、本研究の知見は臨床的に重要である。

【コメント】
 予後予測モデルとしてよく用いられるPPS(Palliative Prognostic Score)は医療者による「臨床的な予後予測」が大きく影響することが課題であり、PiPSはその点で優位性がある。症状評価は医療者と患者による評価で一致しないことが一般的に知られており、本研究の知見はPiPSの妥当性を高めたと言える。しかしPiPS は予後予測に用いる項目数が多く煩雑であり、臨床応用は難しいかもしれない。

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