Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.58
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2013  58
Journal Club
進行期がん患者の化学療法への期待の実態とその関連要因
東北大学大学院 緩和ケア看護学分野  佐藤 一樹
Weeks JC,Catalano PJ,Cronin A,Finkelman MD, Mack JW,Keating NL,Schrag D.Patients' expectations about eff ects of chemotherapy for advanced cancer.N Engl J Med. 2012;367(17):1616-25.

【目的】  
 進行期肺がん・大腸がんでの化学療法は予後を数週間から数か月延長しうるが根治は難しい。進行期 肺がん・大腸がん患者の化学療法への期待の実態とその関連要因の検討を目的とした。

【方法】
 CanCORS研究という米国の5 地域で行われたコ ホート調査のデータを使用した。2003 〜 2005年に診断された肺がん患者5015 名と大腸がん患者4725 名に、診断後4〜7か月後にインタビュー調査を行 った。そのうち、病期がステージWで化学療法への 期待に関する質問に回答し、実際に化学療法を受け た肺がん患者710名と大腸がん患者483名を分析対象とした。化学療法への期待は、「主治医と化学療法について話した後に、化学療法ががん治癒、予後延長、がんによる症状の緩和のそれぞれにどのくらい役に立つと思いますか」と尋ね、「とてもそう思う」から「全くそう思わない」の4件法と「わからない」から回答を得た。包括的なカルテ調査を行い、化学 療法への期待の関連要因を分析した。

【結果】
 化学療法ががん治癒に全く役立たないと認識していなかった進行期がん患者は、肺がんで69%、大腸 がんで81%であった。多変量ロジスティック回帰 分析の結果、化学療法のがん治癒の効果への不正確な認識は、肺がんより大腸がん(OR=1.75)、白人 よりヒスパニック(OR=2.82)や黒人(OR=2.93)、医師とのコミュニケーションが良好な方(3 段階評 価でOR=1.37〜1.90)で有意により多く、教育歴、 ADL、意思決定での患者の役割は関連しなかった。化学療法ががん治癒、予後延長、症状緩和にとて も役立つと認識していた進行期がん患者はそれぞ れ、肺がんで25%、51%、34%、大腸がんで36%、 67%、46% であった。

【結論】
 化学療法を受ける進行期がん患者の多くは化学療 法が根治目的でないことを認識していない可能性があり、正しい情報提供を受けて意向にそった治療の 意思決定を行う妨げとなりうる。

【コメント】  
 化学療法の限界について多くの進行期がん患者が正しく認識していないことを大規模調査で示した研 究である。治癒は見込めなくとも予後延長や症状緩和の効果は期待でき、治癒に対する化学療法への期待の高さを問題とすべきかは議論の余地がある。著者らは、真の意味でのインフォームド・コンセント でないこと、予後延長や症状緩和の効果だけでは化学療法の副作用を受け入れられないという進行期が ん患者の意識調査結果、終末期での治療計画の障害となり得ることを考察している。一方、コミュニケ ーションの評価がよいほど化学療法に期待が高いことは、化学療法への期待の高さの誤解を改善することが必ずしも患者の満足度の向上にはつながらない 可能性を示唆している。

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