Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.57
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2012  57
Journal Club
ウェールズにおける看取りのケアパスの有用性の評価
:多施設診療記録調査
東北大学大学院緩和ケア看護学分野  菅野 雄介
Rosalynde Patricia Johnstone, Angela Jones, Andrew Fowell, Christopher Richard Burton, Jo Rycroft-Malone. End of life care in Wales: evaluation of a care pathway-based implementation strategy, BMJ Support Palliat Care 2012;2:150-5.

【背景】
 ウェールズにおける看取りのケアパス(The All Wales Care Pathway for the End of Life Pathway)は、英国のLiverpool Care Pathway(以下、LCP)を基に開発されウェールズ全土で使用されている。本研究の目的は、多施設による診療記録調査によりウェールズにおける看取りのケアパスの有用性を明らかにすることである。
【方法】
 対象者は、2007年7月から2009年6月の間で、病院(24施設)、ホスピス(9施設)、地域(20施設)で死亡した患者1,183名のうち、突然死や欠損値を除く981名を解析対象とした。解析方法は、記述統計を算出し、ケアパスを使用している群と使用していない群に分け、終末期ケアにおけるケアの達成割合についての比較と施設間でのケアの達成割合の比較を行った。
【結果】
 ケアパスを使用していた群は、580名(59.1%)であった。ケアパスを使用している群と使用していない群で、終末期ケアにおけるケアの達成割合の差が大きい項目(70%以上の差)は、「宗教、スピリチュアル、文化などの要望の記載」(74.4% vs 4.0%)、「死別ケア/家族ケア:家族は患者が看取り期であることを認識している、ケア計画が家族と話されている」(86.9% vs 6.0%)であった。ケアの達成割合の差が小さい項目(20%未満)は、「心肺蘇生をしないことが明記されている」(93.8% vs 73.8%)、「身体症状のアセスメント」(91.9% vs 73.1%)であった。   
また、施設間でのケアの達成割合では、ホスピスで全てのケア項目でほぼ70%以上が達成されていた(ケアパスを使用していない群も含む)。
【結論】
 ウェールズにおける看取りのケアパスは、ケアパスを使用していない群と比較し、終末期ケアの達成割合は全体的に高く、特にスピリチュアルケアや死別ケアにおいて有用であることが示された。
【コメント】
 本研究は、看取りのケアパスの有用性について診療記録調査により評価したものである。死別ケアやスピリチュアルケアの有用性について質的研究で明らかにされていたが、量的研究で有用性を明らかにしたことが本研究の知見である。現在、LCPはヨーロッパを中心に世界中に普及されているが、ウェールズや中国のようにその国の文化に沿った独自の看取りのケアパスを開発している国もある。LCP日本語版は、ある程度臨床現場での使用実績が積み重ねられており、今後は日本独自の看取りのケアパスの開発が期待される。

Close