Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.57
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2012  57
Journal Club
コホート研究によるがん患者の終末期のQOLに関連する要因の検討
:Coping with Cancerプロジェクト
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野  宮下 光令
Zhang B, Nilsson ME, Prigerson HG.Factors Important to Patients’ Quality of Life at the End of Life. Arch Intern Med 2012; 172(15): 1133-42.

【背景】
 治癒を目的とした治療がなくなった場合、がん治療の目的はしばしば延命からQOLの維持向上に変わる。しかし、がん患者の終末期のQOLに関連する要因はほとんど調べられていない。
【目的】
 本研究の目的はがん患者の終末期のQOLを向上させるための介入のターゲットを検討するために、終末期のQOLに影響する要因を調査することである。
【方法】
 米国で「Coping With Cancer」プロジェクトと呼ばれる多施設前向きコホート研究が実施された。396人の進行がん患者とその家族が2002年9月〜2008年2月にリクルートされた。患者の死亡までのフォローアップ期間の中央値は4.1か月であった。患者の死亡前1週間のQOLは遺族調査によって測定された身体的苦痛・心理的苦痛・全般的なQOLの3項目遺族調査の合計点とした。
【結果】
 終末期のQOLに関連した要因は以下の順番であった。1.死亡前1週間にICUに入室したこと(QOLを下げる:分散の説明率4.4%)、2.死亡場所が病院であること(下げる:2.7%)、3.ベースラインにおける患者の不安(下げる:2.7%)、4.ベースラインにおける宗教的な祈りや瞑想(上げる:2.5%)、5.がんの部位(1.8%)、6.死亡前1週間に経管栄養チューブを使用していたこと(下げる:1.1%)、7.病院やクリニックにおけるパストラルケア(上げる:1.0%)、死亡前1週間の化学療法(下げる:0.8%)、9.ベースラインにおいて患者と医師の信頼関係(上げる:0.7%)。残念ながらこの結果のように終末期のQOLに関して分散の大半は今回測定した変数では説明できなかった。
【結論】
 進行がん患者の終末期のQOLに関連する要因が同定された。
【コメント】
 本研究はコホート研究により、遺族による終末期のQOL評価の関連要因を検討した。本研究の優れた点はQOLに関連する可能性がある要因を網羅的に測定している点である。また、結果から米国で終末期ケアの質が低い指標として提案されているICUへの入室や死亡前の化学療法などが数値的に実証されたことも意義がある。臨床的には患者と医師の信頼関係がQOLに関連したことが意義深い。患者と医師の信頼関係が良く、患者が尊重され、十分な話し合いができることは、今回同定された他の要因にも関連するであろう。遺族によるQOL評価という限界はあるものの、終末期がん患者のQOLを検討するうえで今後重要となる論文である。

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