Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.57
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2012  57
モーニングセミナー5
緩和医療における医療経済に関する保険委員会の取り組み
座長・報告  藤田保健衛生大学医学部 外科・緩和医療学講座  東口 志
 小生が委員長を務める当学会の健康保険・介護保険委員会(以下、保険委員会)では2008〜2012年の4年間にわたり、「緩和医療」に関わる診療報酬のUPを目指して積極的に動いてきた。外科保険連合、内科保険連合、看護保険連合の三保連への加入に加え、厚生労働省や政府機関への働きかけもコツコツと実施してきた。今回、緩和医療に関する診療報酬の大幅な引き上げがなされたことと、本委員会の働きかけをぜひ学会委員の皆様に知っていただこうと、副委員長である服部政治氏に「緩和医療における医療経済に関する保険委員会の取り組み」と題して講演を依頼した。
 服部氏は、保険委員会の活動、診療報酬改定までの道のり、そして具体例として緩和ケア病棟入院料の増額に至った背景の順にわかりやすくお話しいただいた。
 「そもそも保険委員会ってなに?」とう題名から始まったスライドは、大まかに保険委員会が何を目的に活動しているかを示し、次いで経時的にこれまでの保険委員会の活動を示したことで、委員会がこの4年間でなにを目的にどのように活動したかが会場の聴者によく理解していただけたと思う。
 次に、実際に保険委員会から各保険連合、厚生労働省に提出した数多くの診療報酬改訂要望の内容とその結果、増額改訂された内容について表を用いてわかりやすく説明してくださった。たとえば、3年前まで300点/人/日であった緩和ケア診療加算が現行の400点/人/日となったことや、緩和ケア病棟入院料、がん性疼痛緩和指導管理料、在宅患者緊急入院診療加算、がん患者カウンセリング料など実際に新規認定、増額、項目の見直しなどをされたものに加え、まだ認定されていないが、委員会として引き続き要望しているリンパ浮腫指導管理料の新設やがん患者カウンセリング料の要件見直しなど、継続した活動を行っていることが強調された。
 また、具体的な働きかけの一例として、緩和ケア病棟入院料増額(3780点→4791点/人/日)に至るまでの保険委員会としての取り組みについても順を追って示された。ここで服部氏が強調されたのは、「点数を上げてくれ」って言えば上げてくれるように甘くはない、ということであった。そこで保険委員会では、なぜその点数では賄えないのか、具体的に何点足りないのかという説得力のある「数字」が必要であるとのことで調査を開始した。なにが不足しているのかを薬剤別に調査し、サンドスタチンR(または“ある特定の薬剤“)を使用した患者群で赤字が進むことが統計学的に証明されたことで、1日あたりの点数を増額にするか、使用例ではDPCを分岐させるかを要望し、結果的には条件付きではあるが4791点/人/日という大幅な増額に至った。
 そして最後に、「保険委員会では、病院、ホスピス、在宅、看護、MSWなど多職種からの意見を保険点数として生かせるように活動しています。今年度の診療報酬改訂では、緩和医療に関わるものがこれまでにない大幅な増点や要件緩和につながりました。今後もアンケート調査などご協力をお願いいたします。」と保険委員会の活動への協力宣伝も欠かさないというちゃっかりぶりを発揮していた。
 早朝に開始されたセッションにも関わらず、会場には100名以上の聴者が訪れ、真剣に服部氏の発表を聞いていた。手前みそながら、本セッションは当委員会での活動が実際どのようにみなさんの診療に反映され、患者様に貢献しているかを知ってもらう意味で大変有意義であったと思っている。服部氏のわかりやすいスライドや心に響く声に私だけでなくみなが魅了されたセミナーであった。

Close