Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.57
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2012  57
パネルディスカッション4
がんを家族にどう伝えどう支えるか
座長・報告  慶應義塾大学 看護医療学部  茶園 美香
座長  北海道医療大学 看護福祉学  川村 三希子
 子育て中のがん患者の子ども(18歳以下)に病気や治療を患者自身1)が、子どもにどのように伝え、対応するかが課題となっている。今回は、子育て中のがん患者と子どもへの支援の実践を紹介していただき、今後、医療者の活動への示唆をえることを目的とした。
 三浦智史氏(医師、腫瘍精神科)から、子どもに伝えられない事例に対して、「真実を伝えないことで子どもがどういう影響を受けるか」、「残された子どもと家族のこれからの人生のことを考えることが大切」という視点で関わった結果、病状を伝えることができ、残りの時間が有意義に過ごせたことが紹介された。「子どもを主語」にすることで、子どもの「今」に注目していた親の視点が、「将来」に注目する視点へと変わるような関わりの重要性が提言された。
 小澤美和氏(小児科医)は、乳がんの親と子どもを対象にした「情緒・行動の問題」に関する調査から、親が病気をした場合、半数以上の子どもが中程度以上の心理的外傷後ストレス症状(PTSS)を経験し、母親の不安・抑うつの程度が高い方が子どもの情緒的・行動上の問題が重篤であることが報告された。がん患者の子どもへの支援は、このような子どもの反応を考慮して行う必要があることが提言された。
 井上実穂氏(臨床心理士・スクールカウンセラー)からは、多職種によるチャイルドケア・プロジェクトの立ち上げと具体的活動が報告された。その中で、患者・家族が子どもについて相談しやすい窓口の開設、チャイルドケアを周知する院内活動と地域への働きかけ(県内外の医療機関への情報提供、教育や福祉機関との連携など)が紹介された。多職種が連携を取りながら、子どもは、病院でも生活の場においても、ケアが受けられる体制づくりの必要性が示唆された。
 大沢かおり氏(医療ソーシャルワーカー)は、HOPE TREE2)で行った「がん患者が子どもに病気を伝えた時の子どもの反応」の調査から、伝えた直後の子どもはショックを感じるが、やがて気持ちを素直に表現したり親の手伝いができるなど、前向きの行動が取れることが紹介された。子どもに「なぜ伝えるか、どう伝えるか」について、子どもは親の小さな変化に気づいて不安になるため正直に話すことが重要であること、伝える場合には、「3つのC」、つまり、がんであること[cancer]、伝染する病気ではないこと [Catchy]、子どもが原因ではないこと [not caused by]を伝えることなどが紹介された。
 がん患者と子どもの状況は多様であり、必ず伝えなければならないとは言えない。個々の患者とその家族が意思決定できる「プロセス」を支援することが医療者の役割として重要であることを確認した。
 1)原則として患者自身が伝えたほうが、子どもとの信頼関係が築けると考えら得ている。しかし、患者自身が伝えることが難しい場合もある。その場合には、親である家族、または医療者が伝えることもある。
 2)HOPE TREEは、がんの親をもつ子どもをサポートするための情報を提供している団体である。(http://www.hope-tree.jp/)

Close