Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.57
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2012  57
シンポジウム14
緩和ケアと栄養管理
座長・報告  足利赤十字病院 緩和ケア内科  田村 洋一郎
座長  藤田保健衛生大学医学部 外科・緩和医療学講座  東口 志
 本セッションでは、以下の臨床研究が報告された。
 演題1:崎元氏は通院可能であったがん患者15例の栄養状態を食事摂取量、総エネルギー量、基礎代謝エネルギー量を用いて評価した。総エネルギー量を満たさず飢餓によると考えられる低栄養状態は積極的な栄養療法によって全身状態の改善が可能となることを報告した。
 演題2:森氏は欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)により始められた地球規模の栄養状況調査nutrition Dayの現状を報告した。緩和ケア病棟単位の参加ががん患者栄養療法のガイドラインを確立する基礎データとなる一方、日本国内独自のデータをまとめていくことも行政にフィードバックさせるため有意義であることを強調した。
 演題3:川口氏はチーム医療による栄養療法の認識が高まる一方、医療者側のがん患者に対する食事に関する問題意識を調査した。栄養士による食形態の再調整、栄養剤選択、嗜好調査に沿った食事の提案など直接的な個別対応により食事の摂取量が増加したことを報告した。
 演題4:西村氏は切除不能胃癌患者に対する経口補水療法の経験を報告した。経口補水療法は簡便かつコンプライアンスが良好で、入院期間の短縮とQOLの維持が可能となった。また、終末期ばかりでなく化学療法施行時においても有効であることを示した。
 演題5:中島氏はがん終末期になると溢水徴候や全身状態の悪化により輸液栄養治療の変更が必要となるが、患者・家族の希望との間に相違がある場合の原因と対応について報告した。倫理的方法といわれているtime-limited trialは推奨されるが、その間の患者への負担に配慮することをとくに強調した。
 演題6:武内氏はがん終末期患者における輸液制限の現状と課題について検討した。輸液内容と輸液量を明らかにし、TPNや通常の輸液量の継続は予後の延長を認めず、また生命予後の推定期間と症状に応じた適切な輸液量の制限が患者のQOLの改善に寄与することを報告した。
 演題7:大原氏は終末期がん患者に対する栄養療法の試みとして症状・機能改善補助食品の開発と効果について報告した。Refractory cachexiaに陥ってない終末期がん患者32例がCoQ10、BCAA、L-カルニチン、ビタミンB群、E、亜鉛、クエン酸などを含有した補助食品を摂取することにより臨床症状や血液生化学の改善がもたらされ、その有用性を示唆した。
 以上が発表の概略である。本学会ではこれまで代謝・輸液が主題として何度か取り上げられてきたが、栄養問題は今回が初めてである。終末期の代謝・悪液質の解明、輸液・栄養問題は今後も重要な課題の一つと思われる。

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