Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.57
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2012  57
シンポジウム10
日本の緩和医療の将来像
座長・報告  岡山大学大学院保健学研究科  齋藤 信也
座長  医療法人社団 かとう内科並木通り診療所  加藤 恒夫
 まず、池上直己慶応大学教授からは、『国民の意向と終末期ケアの課題』と題して、実証的データに基づいた終末期ケアの問題点が示された。特別養護老人ホームでは、施設内で亡くなることを希望した割合は55.5%と、病院のそれの16.0%の3倍以上であった。そこで、入所者に対し、施設内で最期を迎えることのできる選択肢を示し、支援体制を整備すれば、病院死を減らすことが可能と考えられた。このように、今後わが国では、虚弱高齢者の終末期ケアが大きな課題になるとの認識が示された。
 次に、恒藤暁大阪大学教授からは、『日本緩和医療学会の活動の現状と展望』についての、丁寧な説明があった。また、それを踏まえて今後の日本の緩和医療の方向性として、@疾患を問わない緩和ケア、A時期を問わない緩和ケア、B場所を問わない緩和ケア、C質の高い緩和ケア、という4つのスローガンが提示された。
 最後に、志真泰夫筑波メディカルセンター副院長からは、日本ホスピス緩和ケア協会理事長という立場から、『日本ホスピス緩和ケア協会の新たな挑戦:プロフェッショナル・地域・エンドオブライフ』というタイトルで、今後の日本の緩和医療の姿に対する提言がなされた。まず、緩和医療を救急医療になぞらえて、3つのレベル(「緩和ケアアプローチ」、「基本的緩和ケア」、「専門的緩和ケア」)に分類し、特に専門的緩和ケアに従事するプロフェッショナルの養成が急務であるとした。また、病院の緩和ケアチームが地域に出て、地域と交流することの重要性および、超高齢社会における終末期の過程(エンドオブライフ)に取り組むことの必要性が強調された。
 シンポジスト間のディスカッションでは、がんの分野において導入され、発達してきた緩和医療が、今後がん以外の疾患にも適応される必要のあること、殊に高齢者のエンドオブライフケアに提供されなければならないとのコンセンサスが得られた。
 緩和医療をがんから非がんに広げてゆくことは、欧米の趨勢であるが、わが国の緩和医療の指導的立場にあるシンポジストの間でそれと同様の将来像が確認されたのみならず、そのための具体的方策のいくつかが示された有意義なシンポジウムであった。

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