Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.57
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2012  57
会長講演
社会を変えていく力、ひろく ふかく たかく
座長・報告  藤田保健衛生大学医学部 外科・緩和医療学講座  東口 志
 第17回日本緩和医療学会が2012年6月22日、23日(金、土)、神戸国際会議場で華々しく開催された。学会初の神戸・横浜会場の神戸会場での開催であった。開催前日まで例年になく早くやってきた台風の影響で、各地で土砂降りの雨、雨、雨であった。しかし、不思議と学会開催の朝は静かで爽やかな晴天であった。司会の大役をいただいた次期会長の私は、ううむ・・・大したものだと感嘆した。この日の晴天で大会長松岡順治教授はこの学会を既に成功させた!・・・学会の天気はすべてを左右する。私も一年前、2011年2月に名古屋で第26回日本静脈経腸栄養学会を開催させていただいた経験があり、松岡先生の前日までの苦悩と本日の喜びを自分のことのように感じられる一人である。当然、この会長講演も冒頭は天気が良くて良かったという、いわば当たり前であるが非常に重みのある言葉で始まった。
 学会の会長講演は、会長をされる先生のこれまでのライフワーク的な仕事、特に学術的な内容をまとめて、ご参加いただいた皆様にご披露することが常である。しかし、松岡会長は敢えてその内容を現在の社会の現状と今後のあり方に絞られ、しかもさまざまな画像と音楽によって聴衆を魅了された。内容を少し紹介すると、
 @人の幸せについて;東日本大震災後の日本人の死生観の変革と緩和ケアの在り方から、日本人の幸せと長生き願望の裏表をお話しされ、社会を変えていく力の源を示された。
 Aソーシャルキャピタル;地域が信頼と協調でしっかりと結ばれて、ひとつの大きな目標に立ち向かう時、その構成メンバー全員に身体的かつ精神的安定をもたらす。緩和ケアという概念の元で一つに結びつく事ができれば社会はきっと良くなる。
 B野の花プロジェクト;このプロジェクトは、Aを求めつつ、松岡先生が日頃より実際に行っておられる地域の市民啓発活動である。この地道な活動によって岡山県全体で緩和医療という言葉をしっている方が一気に急増したとの報告が行われた。とても大切な活動であり、しかもきっちりと結果を出しておられるところがさすが松岡先生と惜しみない賞賛を送りたくなった。
 Cひろく、ふかく、たかく;これがこのご講演のメインである。これまでの内容をお話になり、そして最後に音楽、というよりもミュージックが登場した・・・先生の願いとも先生の心の叫びともとれる言われもしない感動が心に満たされる。ジャズを愛する松岡先生の独特の表現方法である。緩和医療のこれからの在り方を医学だけでなくあらゆる手法でもって広め、深め、高める・・・。きっと、このことが言葉ではなく身体全体で感じ取れた会長講演であったと思う。
 最後に、来年は会長講演はやめようかなあ・・・と・・・かなり弱気になって司会の席を立った。

Close